34:笑わせないで
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を感じたのは、宿で俺達にアイテム一覧を開示する時だった」
それにユミルは僅かに眉をひくりと動かした。
「やっぱりあの時か……あれはボクとしても痛恨の失態だったよ。あの決闘……今でも後悔してる」
二日前、ユミルは俺との決闘に敗れた際、その対価として自分の情報のほとんどを俺達に開示した。
滞りなく取り調べは進んだが……その話の最中で唯一起こった、イレギュラーな事態。
そう……ユミルが慌てて二階の自室へと逃げ込んだ時だ。
「お前はあの時……アイテム一覧を開示する直前、自分の部屋に本当は何を隠した?」
「……………」
ユミルは沈黙に入る。
ユミルがアイテム一覧を開示する前に、アスナ達は、何故か俺だけそれを見ることを執拗に許容しようとはしなかった。
それは何故か?
俺はその日の晩、実はその件をクラインにメッセージで事件の経過報告のついでで相談したことがあった。すると、しばらくしてクラインは……いやクラインも、俺を長々と散々罵倒する前置きを連ねてから、こう言ったのだ。
『――いくら取り調べとはいえ、女の子が見知らぬ男に自分のプライベートを見せたがるわきゃねーだろうがよ! ただでさえそうなのに、ンな美少女のアイテム一覧と言や、そりゃオメー……そン中には、気合いの入ったメーキャップアイテムや勝負用の可愛い私服はもちろん……し、下着とかが満載なんだぜっ!? って、何言わせンだこの野郎!! つーか、ホンットに手前は鈍感ヤローだな!! ンな調子だから(以下略)』
……………。
……つまり、そういうことだったのだ。
だが。
よく思い出して欲しい。
…………ユミルは、男なのだ。
そして彼は、可憐な容姿を持ちつつも、それを以ってして女の子然としている訳ではなかった。彼はあくまでも、自分を男として扱ってくれることを望む性格だったのだ。
そんな彼が、以上の理由でアイテム開示を拒むだろうか? そんなのは、とてもだが考えにくい。
無論、男性プレイヤーのアイテム欄の中には、相手に見せるに恥じらうようなメーキャップアイテムなど皆無である。もし仮にデート用の勝負服などを持っていたとしても、男ならばそれを見せるに躊躇いなどは無いだろう。
ならば、だ。
――ユミルはあの時、青い顔で慌てまでして、一体何を隠した?
……そう、死神の犯行に使った《道具》に他ならない。すなわち……
「……これ以上隠してもしょうがないか。ボクが隠してたのは……コレだよ」
そう言ったユミルの一言が、真実の一端を示した。彼が手早くアイテムストレージを操作して手に持ったのは……
と、思った瞬間。
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