34:笑わせないで
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出した。
「っ……」
泡が破裂するたびユミルの体が軽く揺れ、HPがごく僅かずつだが減少していく。だがユミルは歩みを止めることもなければ、ごくごく僅かに口の端を上げている気がする無表情も微塵も崩さず、とうとうピナの目の前に立つ。
「ユミルさんっ……お願いだから、もうやめて……! ピナを……ピナまで、傷つけないで下さい……!」
シリカが涙ながらに嘆願するも、ユミルはそれに耳も貸さない。
そして……
きゅうっ……というピナの短い悲鳴と共に。
…………ユミルは、ピナを抱きしめていた。
両手で柔らかく包み込み、首ももたげて小竜を優しく包み込んでいた。
「…………!」
シリカはそれに目を大きく見開き、ピナも驚いているのか、ほとんど抵抗の素振りを見せなかった。
と……
「―――――。」
ユミルは何かをピナの耳元で呟いた。次の瞬間……
ぴぃ……というピナの再び小さな悲鳴の後、その体が今度こそくたりと力なく彼の腕の中で横たわった。ピナの微かに削れたHPバーもまた、緑色の枠に覆われていたのだ。ユミルの右手には……いつの間にか、薄緑色に濡れたナイフが握られていた。恐らくそれで、ピナを毒効果の判定のあるギリギリの力でそっと斬ったのだろう。
ユミルは此方に背を向け、シリカの傍に膝をついて、ピナをそっと地に降ろした。
「ユミルさん……あなたという人は、本当にっ……」
「黙って。それ以上言ったら……今度こそ、キミもピナも……殺すから」
「……う、うっ……ユミル、さん……」
どうやらシリカはユミルの呟きを聞き取れたようだった。シリカはユミルと何らかの意図を含んだ短い言葉を交わした後、震える手で目の前のピナを胸に抱き寄せて泣き始めた。
ユミルが静かに立ち上がって手のナイフを懐に仕舞い……その手を一瞬だけ目元に運ぶ仕草を見せてから、彼は俺を振り返った。
その顔は以前と変わらず徹底的に冷えきった無表情だった。
「……そういえば、キリト。キミは最初ボクを見て『やっぱり』って言ったよね。キミは……最初から、ボクが犯人だと疑ってたの?」
ユミルは己が突き立てた大鎌へと歩き出しながら俺へ問うた。
「いや……犯人がお前だと確信が持てたのは、ついさっきだ。……知り合いの両手斧の使い手に確認を取ってからだった。それと……大鎌のスキルの謎もな」
「……へぇ」
ユミルは大鎌を地面から引き抜き、ヒュンと器用に半回転させ、空へと突き立てたその柄を胸に抱き締めながら俺を見た。
「それじゃあ、聞かせて貰おうかな……? ボクこと死神と……大鎌の秘密の推理とやらを」
俺は油断せず剣を下段に構えながら口を開く。
「……まず最初にお前に疑問
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