気付き兵長と優しい私 4
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「リヴァイ兵長、渡したい物って何ですか?」
「あぁ……これだ」
そう言ってリヴァイ兵長は、ある物を差し出した。
私の瞳に映ったものは__
一つのパンだった。
「……兵長、これってお昼のパンですよね」
「そうだ」
毎食、パンは一人一つずつという決まりがある。
このパンはもしかして…………
「エネ、これ食ってなかったろ。食え。お前も食いてぇくせに、無理に人にあげるんじゃねぇ」
「!! 気付いていたのですか。でも、いいです。それはリヴァイ兵長のでしょう。受け取れません」
「何言ってやがる。俺はいいんだ。ろくに飯も食わずに壁外調査へ出て死ぬような奴を出したくねぇだけだ。とにかく食って体力つけろ」
「……それではお言葉に甘えて。兵長、ありがとうございます」
私はリヴァイ兵長からパンを受け取り、口に含む。いつもと同じ味の筈なのに、この時は違っていた。
「凄く美味しいです!」
リヴァイ兵長、貴方がいるからこんなに美味しいんですよ?
……なんて言える勇気は、私にはなかった。
私はそのまま食べ続けるが、リヴァイ兵長はずっと黙ったままでいる。
時々私の顔を見てくるけど、何も言ってこないからお互い話さずにいた。
この沈黙が気まずいという事はなく、二人の間に穏やかな時間が流れていた。
リヴァイ兵長は、私の為に食べ物を持ってきただけ。
だけど…………
こんな時間がずっと続けばいいのにね。
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