第十六話 王子誘拐
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「んん?」
眠らされたマクシミリアンが、目を覚ましたのは空が白みがかる頃だった。
「お目覚めの様ですね……殿下」
声のした方向を見ると、ド・フランドール伯が、にやにやと下卑た顔で笑っていた。
さらに辺りを見渡すと、窓も何も無い小さな部屋に運ばれたようだった。
動こうとするが、ロープでがっちりと縛られていて動けない。
「ド・フランドール伯。これはいったい何の真似か」
「何の真似かと申されますと、マクシミリアン殿下、貴方はやり過ぎたのですよ」
「やりすぎた? ……何をだ」
「お気づきになられないとは……ならば、お教えいたしましょう。マクシミリアン殿下、貴方が行った改革は多くの友人を路頭に迷わせる事になってしまったのです」
ド・フランドール伯はチラリと後ろに控える男に目を向けた。
マクシミリアンは知らないが、この男はアルデベルテ商会の番頭だ。
(それって、逆恨みじゃないのか?)
マクシミリアンはゲンナリした顔でため息をついた。
「……はぁ、僕を捕まえて何をしようって言うのさ」
「殿下は、しばらくの間、アントワッペンに住んで頂きます」
「人質……って訳か。その後はどうするんだい? ガリアかアルビオンに鞍替えするつもりなのかい?」
ド・フランドール伯の領地が、大都市アントワッペンがそっくりそのままガリア領、もしくはアルビオン領になったら、経済的にも国防的にも大打撃だ。
「鞍替え? ははっ、とんでもない……」
「それじゃ、目的は何なんだ?」
「殿下には関係の無い事です。おい、しっかりと見張っているんだ。間違って傷つけないように」
ド・フランドール伯は、人相の悪い男数人に命じると部屋から出て行った。
☆ ☆ ☆
ド・フランドール伯が去った後、人相の悪い連中と取り残されたマクシミリアンは脱出方法について思案を巡らせていた。
狭い部屋の中で後ろ手に縛られ、床に転がされた状態のマクシミリアンを、人相の悪い男たちはニヤニヤと見ている。
「天才と謳われたマクシミリアン殿下が、今では俺たちみたいなロクデナシの虜囚に落ちるとは、人生ってのは何が起こるか分かりませんなぁ? そうは思いませんか? 殿下?」
「……」
「へへへ……怯えてるんですか? 殿下?」
「……」
この男たちは、どうやら平民らしく、手に持った前装式のピストルを、抵抗できないマクシミリアンにチラつかせて、強者の感覚に酔っている様だった。
(杖も何処かに持って行かれたみたいだし、どうやって、外部と連絡を取ろう……)
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ