IF 完全平和ルート
偽装結婚シリーズ
被害者達の偽装結婚
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――室内には大勢の男達が集まっていた。
どの顔も何処か緊張した面持ちで、一部には眉間に皺を寄せている者すらいた。
「皆に集まって来てもらったのには他でもない。単刀直入に言わせてもらおう――……俺達の身に危機が迫っている」
重々しい言葉に、室内がざわめく。
「これは、これは……。どうやらのっぴきならない事態の様じゃのう」
「その通りです、志村の頭領」
「それで猿飛殿……、用件とは一体?」
ざわついた空気を払拭する様に咳払いの音が響けば、室内は静まり返った。
「……理由というのは他でもない――数時間前にうちはヒカク殿が胃潰瘍で入院した。因みに原因は心因性のストレスだそうだ」
「……」
「…………」
「こ、今月に入ってから、もう三度目だぞ……! 大丈夫なのか、ヒカク殿は……?」
「いや、こればかりはどうしようもねーよ、山中の。――あの二人に一番近しい位置にいるんだし、ある意味当然と言うか、なんと言うか……」
「大変だよねぇ、本当」
疲れた様な囁きが零される中、恨めし気な呟きが上げられる。
「……無自覚な、そう無自覚な男程、厄介なものはない……! とっとと、素直になって、くっ付いてくれれば良い物を……!」
「言うな、山中の! 虚しくなるだけだ!!」
「けどこのままじゃ、ヒカク殿と言う防波堤がいなくなった今! 次に病院送りにされるのは俺達の中の誰かだぞ!!」
「…………」
「…………」
男達が一斉に震え出す。
ややあって、最初に発言した男が疲れきった声を上げた。
「そ、それもこれも、全部あの馬鹿のせいだ……! なんだってば名目上とはいえ、仮にも旦那に対して嫁さん候補を紹介し出すんだよ!? しかも各地の才媛と名高い美人ばかり! 厭味か、あの野郎!!」
「落ち着け、猿飛の頭領。あやつがずれておるのは今更じゃ。――大方、偽装結婚をさっさと終了させて、今度こそまともな娘と結婚させてやろうとか言う、誰にとっても迷惑な気遣いの結果であるに違いない」
「……される側からしてみれば、余計なお世話でしかないのですがねぇ」
「ああ、そうだな……」
「残念ながら、その通りだな」
頷き合う男達であったが、どの顔も他人が見れば同情したくなってしまう程、疲労の色が濃い。
「これ以上あの面倒くさ……ごほん! あの仮面夫婦を放っておく訳にもいかんからなぁ。俺達がなんとかしてやるしかねーだろ」
「でも何とかって――どうするんですか、犬塚の?」
「そうだな……。なんか良い案が誰かあるか?」
「もういっそ、酒でも飲ませて押し倒させてしまえ!」
「馬鹿言うな! 前に酔っぱらって殺し合いを始めた二人が山三つ吹き飛ばした事を忘れたか!! あの時は地図を書き換えさせる羽目になった挙句に、あ
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