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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十五話 広域捜査局第六課
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た。今から五年前、当時閣下は未だ大佐で戦功により准将に昇進するだろうと思われていました」
「五年前か」
前議長が感慨深そうに言葉を出した。帝国軍の実力者、宇宙統一の立役者が五年前には大佐だった。確かに不思議な感じがする。五年前、出会った時にはこんな日が来るとは想像も出来なかった。

「将官になれば副官を置く事が認められます。ですが閣下には副官を置く事が出来るかどうか、難しい状況でした」
「それは何故かな?」
「階級は准将、出自は平民、年齢は二十歳。副官として仕え辛いとは思いませんか?」
前議長が“なるほど”と頷いた。

今なら出自による差別は無い。だがあの当時は貴族達の全盛時だった。目端の利く人間なら貴族出身の将官の副官になる事を望んだだろう。それに比べれば平民出身の将官の副官は一段落ちると見られた。まして自分より若い上官など誰も望まない。

「つまり元帥閣下は副官のなり手が無く大佐は受け入れ先が無かった……」
「そういう事になります。それで小官が副官になりました」
「なるほど」
前議長が頻りに頷いている。予想外の答えだったのだろう。私だって不思議に思っているのだから無理も無い。

「大佐にとって元帥閣下は如何いう方なのかな?」
さり気ない口調の質問だった。不満の有無の調査? 私を取り込もうとでも考えている? 元同盟人だから同盟の現状を憂いているとでも? 甘く見ないで欲しいな。元帥閣下の副官になって五年、ほんの些細なミスが命取りになる事をこれまで嫌というほど私は見てきた。銀河帝国で生き延びるという事は決して容易ではないのよ、前議長。特に権力者の傍にいる人間は。ついでに言えばこの五年、民主共和政が懐かしいなんて思った事など一度も無い。そんな事を考えるほど暇じゃなかった。

「出来の良い弟みたいなものです」
「ほう、弟……」
「ええ、能力に優れ周囲からも信頼されている。自慢の弟ですね。私に出来る事など大した事ではありませんがそれでも何か御役に立ちたい、何かしてあげたいと考えています」
前議長が感心したように頷いている。

これは警告よ、トリューニヒト。私を利用しようなんて考えない事ね。それとあんたも少しでも元帥閣下の御役に立ちたい、そう考えなさい。……そうなれば分かるわ、本当は時々、いや頻繁に無茶をするから心配で目が離せないって事が……。









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