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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十五話 広域捜査局第六課
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無理だろう。私の正体に気付く人間も出る筈だ、大騒ぎになる。というわけで私はフェザーン商人らしく精々稼がせてもらうつもりだ」
私が笑うとヴァレンシュタインも笑った。

「陛下に謁見されては如何です、ギルベルト・ファルマーとして」
「陛下に?」
「ええ、陛下が貴方をギルベルト・ファルマーと認めれば誰も何も言えません」
「なるほど」
「アマーリエ様、エリザベート様も貴方の事を心配されていると思います」
「……そうだな」
伯母上とエリザベートか、陛下の下で保護されていると聞いているが……。会ってみるか。



帝国暦 490年 8月 25日      帝国軍総旗艦ロキ   ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ



フェザーンを出てもう十日が過ぎた。後一カ月ほどでヴァルハラ星域に到達する。航行は順調過ぎるほど順調で問題は何も生じていない。でも艦橋の雰囲気は必ずしも良くない。理由はヴァレンシュタイン元帥が体調不良で寝込んだから。その事で将兵達は不安を感じている。もっとも一カ月に一度はこれが有るから驚く事ではない。余り嬉しい事では無いけれど……。

ヨブ・トリューニヒト前議長も椅子に座って暇を持て余し気味だ。ヴァレンシュタイン元帥が居れば何かと話し相手になってくれるのだけれど……。もっとも将兵達から彼が嫌われているという事は無い。一部からは一国を代表する政治家としてはちょっと重みが足りないという声も上がっているけど愛想の良い好感の持てる男、それが前議長に対する皆の評価だ。無益な戦いを止め将兵の命を守ったという部分でも評価されている。ただ何を話して良いのか分からない、そんな戸惑いは有ると思う。

視線が合った。前議長が笑みを浮かべると“少し良いかな”と声をかけてきた。
「フイッツシモンズ大佐、君がヴァレンシュタイン元帥の副官になるというのは珍しいのではないかな。帝国では女性兵は前線に出ない、いや出さないと聞いているが」
「そうですね、本来女性兵は前線に出ません。そういう意味では小官はイレギュラーな存在です」
“ふむ”と前議長が頷いた。視線がその先を知りたがっている。無視して変に詮索されるのも面白く無い。差し障りの無い範囲で答えておこう。

「小官が亡命者である事は御存じだと思いますが」
「ああ、そう聞いている。フイッツシモンズという性からもそれは分かる」
「同盟で士官教育を受けていたため能力的には何処に配属されても問題は有りませんでした。ですが亡命者というのは喜んで受け入れられる存在ではありません」
「そうだね、同盟にもローゼンリッターが有るからその事は分かる」
ワルターは如何しているだろう。同盟が保護国となった今、亡命者は苦労しているかもしれない。

「私が亡命した艦隊の参謀長がヴァレンシュタイン元帥閣下でし
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