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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十五話 広域捜査局第六課
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しくなるのが分かった。
「心当たりが有るんだな?」
二人が頷いた。この二人が放置するのは危険が無いと判断したからだ。つまり味方だ。しかし一体誰だ? ヴァレリーも考えている。トリューニヒトだけが付いて行けずに困惑している。

「広域捜査局第六課が動いた、……と思っている」
「……」
「一年前の事だが密かに五十人ほどフェザーンに送り込んだらしい」
五十人? 第六課の責任者は俺だがそんな話は知らんぞ。

「アントンか?」
キスリングが首を振った。
「アンスバッハ准将?」
「違う、司法尚書ルーゲ伯だ」
思わず息を呑んだ。あの謹厳実直な爺様が殺人を命じた?

清廉潔白、謹厳実直で名高いルーゲ伯が暗殺指示を出した? 信じられん。ヴァレリーも目が点だ。トリューニヒトも驚いている。そりゃ驚くだろう、政府閣僚が暗殺に絡んだのだから。
「ルビンスキーの死体が発見された後、アントンとアンスバッハ准将から良くやったと冷やかされたんだ。憲兵隊は無関係だと言ったら……」
「五十人の事を教えてくれたか」
「ああ、二人とも顔を強張らせていたよ」
「……信じられないな」
俺の言葉にキスリングが“俺も信じられん”と頷いた。

「しかしな、そう考えると辻褄が合う。ルビンスキーが殺されたのはハイネセンで批准が終了した後だ。もしそれ以前に暗殺を実行した場合、ルビンスキーの殺害が発覚すると批准に悪影響を及ぼす可能性が有った。そして通報が有ったのが一週間前、卿の到着を前に不安を取り除いたわけだ」
「……言っている事は分かるが……」
もし批准前にルビンスキーが殺されたとなれば大騒ぎになった事は間違いない。ハイネセンのマスコミは帝国への不信感を煽っただろう。

「その五十人だが当初はあくまで念のため、憲兵隊へのバックアップのためとしてフェザーンに送られたらしい」
「……」
「だが現実にはアンスバッハ准将もアントンもその行動を把握していない。ルーゲ伯が直接命令を出していたそうだ。一年前からね」
つまり去年の夏からルビンスキーの捜索を行っていたという事か。広域捜査局は憲兵隊に比べれば軽視されがちだ、ルビンスキーも油断したのかもしれん。フェルナーもアンスバッハも驚いただろう。広域捜査局第六課がルビンスキー暗殺の実行犯だと思い至った時は。

あの爺さん、俺の両親の惨殺事件の所為で妙に俺に負い目を持っているらしい。今回の一件はそれが引き金だな。俺にこれ以上負担をかけまいとした。困ったものだ。爺さんに似合う仕事じゃないぞ。鮮やかに決めたのには驚いたがな。オーディンで会った時は何て言おうか? お手数をおかけしました? 有難うございました? どうもしっくりこないな。

「まあ良い。大事なのはルビンスキーが死んだ事であって誰が殺したかじゃない。公式発表では犯人
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