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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十四話 再来
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のか。感情に溺れてはならん、冷静にならねば。……確かに一つの区切りでは有る。併合まで三十年かけるとはいえ帝国はフェザーン、自由惑星同盟を下し事実上宇宙を統一した。遷都により過去の帝国と決別し新銀河帝国の成立を宣言する。誰もが新しい時代が来たと理解する筈じゃ。それを実績として退位、まさに陛下こそ銀河帝国中興、いや新帝国創成の名君と言えよう。

しかしこれから新たな国造りを行うとなれば色々と問題も出よう。アマーリエ様よりも陛下が皇帝の方が良くは有るまいか。皇帝としての重みはアマーリエ様では陛下には及ばぬ。特にフェザーン人、同盟人が如何思うか……。いささか不安じゃの。

皇位継承に混乱を及ばさぬようにするというなら陛下が皇帝に留まりアマーリエ様を皇太女とする手も有ろう。実務を皇太女アマーリエ様が行い陛下が後見する。皆も安心する筈じゃ。……ヴァレンシュタインは如何思うかの。退位に賛成するか、時期尚早として反対するか。

あ奴の文官への転身も考えねばならん。軍の混乱は避けねばならんし文官達の混乱も避けねばならん。となると退位問題と連動する様な事態は拙い、混乱が酷くなりかねん。やはりアマーリエ様を皇太女としヴァレンシュタインを国務尚書に持って来るか。そして時期を見てアマーリエ様の皇帝即位とヴァレンシュタインの宰相就任、そんなところか……。



帝国暦 490年 8月 5日    フェザーン  帝国軍総旗艦ロキ   エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



フェザーンに着くとキスリングがボイムラーを伴って訪ねてきた。どうやらこちらに来ていたらしい。遷都前に大掃除をしておこうとでもいうのだろう。艦橋ではなく自室で話す事にした。参加者は俺、キスリング、ボイムラー、ヴァレリー、それにトリューニヒト。なかなか豪華な顔ぶれだ。トリューニヒト君、君に帝国の裏の世界を見せてあげよう。だから皆、そんな胡散臭そうな顔でトリューニヒト君を見るんじゃない。彼は俺の大事な友人なんだ。そして君達の大事な友人にもなる。

幸いトリューニヒトは座談の名手だった。緊張がほぐれるまで時間はかからない。俺とキスリングがフランクに話すのにトリューニヒトは驚いたようだ。記憶のメモにキスリングを重要人物と記しただろう。
「エーリッヒ、ルビンスキーが死んだのは知っているな」
「ああ、彼が殺されたのは知っているよ」

一週間ほど前にアドリアン・ルビンスキーがフェザーンの隠れ家で殺されているのが発見された。例の政府所有の秘密地下シェルターのさらに下に有る隠れ家でだ。犯人は分かっていない。ルビンスキーの護衛も一緒に殺されているところから犯人は単独犯ではないらしい。残念だったな、ルパート。父親との再会は出来なかった、復讐も。

「御見事、ギュンター」
俺が冷やかすとキスリングが首
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