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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十四話 再来
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うむ、ちと相談が有っての。ヴァレンシュタインが戻って来るようだの」
「はい、フェザーン回廊経由で戻って来ます。遅くとも十月になる前に戻って来ましょう」
私が答えると陛下が頷かれた。はて、アマーリエ様、クリスティーネ様がいらっしゃるという事は公ではないな、私の事か。

「その後は遷都か、来年かの」
「はい、フェザーンの状況にもよりますが問題が無ければ」
「新しい都で新しい国造りか」
「はい、そういう事になります」
陛下が満足そうに頷いた。

「皇帝も新しくするというのは如何か?」
「は?」
皇帝も新しくする? 聞き間違いか? アマーリエ様、クリスティーネ様も訝しげな表情をしている。はて……。

「退位しようと考えているのだが」
「陛下!」
「お父様!」
私と皇女方の声が被さった。陛下が声を上げて笑われた。退位など一体何をお考えなのか!

「御戯れは成りませんぞ、陛下」
「戯れではない。予は本気でアマーリエに皇帝位を譲ろうと思っている」
アマーリエ様が“お父様!”と声を上げたが陛下は面白そうにしていた。
「帝国が変わるという事を如実に示すには代替わりこそ至当であろう。それに死ぬまで皇帝を務めるというのも難儀なものよ。もう三十年以上皇帝を務めたのじゃ、十分であろう」

三十年以上……。在位年数は歴代皇帝の中でも上位に入るのは間違いない。御疲れなのだろうか……。しかし退位、これまで退位された方などいないが……。
「ですがお父様、私はオットー・フォン・ブラウンシュバイクの妻でした。心ならずもでは有りますが夫は反逆者になった。その係累である私に皇帝になる資格が有るとは思えません」
陛下が首を横に振った。

「ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も已むを得ず反逆者になった。その事はお前達にはなんの瑕瑾にもならん。だが確かにその事をとやかく言う者もおろう。だから予が健在の内に皇位を譲る。新たな帝国の皇帝に相応しい器量を持つ者としてじゃ」
なるほど、陛下もエルウィン・ヨーゼフ殿下の事を危惧しておいでか……。となるとただ反対という訳にはいかんの。

「畏れながら陛下、陛下の御考えは分かりました。しかしいかにも急であります。臣としましても如何判断すれば良いか判断がつきかねます。おそらくはアマーリエ様、クリスティーネ様も御同様でありましょう」
お二人に視線を向けるとお二人とも頷いた。

「退位はフェザーンに遷都してからじゃ。時間は十分に有る。ゆっくり考えるが良かろう。ヴァレンシュタインにも相談してみよ」
「はっ、必ずや。それ故お願いがございます」
「うむ、何かな」
「暫くは御内密に。外に漏れては皆が混乱致しまする」
陛下が“分かった”と頷かれた。それを機に御前を下がる事の許しを得た。

さて如何したも
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