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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十四話 再来
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部のエリートが国を統治すべきだと思った。ルドルフとの違いが有るとすれば自己を頼む気持ちの強弱、冷徹さだろう」
「……ルドルフ程自己を頼む気持ちが強ければ?」
ホアンが首を横に振った。
「簒奪を図るはずだ。そして冷徹さを失えばルドルフそのものになるだろう」
「……では今のままなら?」
今度は苦笑を浮かべた。
「専制君主制国家の有能な執政者になるだろう。どちらにしても我々には危険な相手だ」
溜息が出た。ホアンが笑い声を上げた。如何して笑えるんだ?

「トリューニヒトも苦労するな」
「覚悟の上だろう、もっとも新たな国創りだ、それなりに楽しみは有るんじゃないか。願いは叶わずとも」
「……そうだな、あれは根っからの楽天家、いや享楽主義者だからな」
「酷い事を」
ホアンが苦笑している。そして生真面目な表情になると“むしろ大変なのは我々だろう”と気遣わしげに言った。それに関しては全くの同感だが私を気遣っているのか?

「ホアン、やらねばならん事は?」
「先ず大使館の設置。そして帝国へ送る大使、そのスタッフの人選だな。それに領土が縮小される、移住希望者は同盟領内に引き取らねばならん。その準備だな」
思わず溜息が出た。有難うホアン、面倒な案件だけでなく比較的簡単な案件も入れてくれて、……感謝するよ。

帝国との講和条約でイゼルローン方面、フェザーン方面の領土をかなり帝国に割譲する事になった。もっとも辺境星域と言われる地域だ。発展はしていないし人口も少ない。同盟経済への影響が小さい事は試算済みだ。むしろ現状では御荷物が無くなって身軽になったと言える。地方譲与税も少なくなるだろう。だがその事も弱者切り捨てだと評判が悪い。

「それに軍備の縮小と人員の削減。失業者が溢れるな」
「公共事業を大規模に行う。……軍人の天下から土建屋の天下か」
禄でもない話だ、利権争いが勃発するだろう。だが戦死者が出ないだけましか。その事を言うとホアンが肩を竦めた。

「失業者は軍人だけじゃない、軍関係の企業も同様だ。軍需から民需への切り替えが上手くいかないと経営が傾くだろう」
溜息が出た。
「ホアン、明るい材料は無いのかな?」
「さっき君が言ったよ。これ以上戦死者は出ないってね」
「有難う、教えてくれて。忘れていたよ、酷い材料が多すぎて」
前途多難だ、また溜息が出た。



帝国暦 490年 7月 1日    オーディン  新無憂宮  クラウス・フォン・リヒテンラーデ



陛下より薔薇園に来るようにと御召しが有った。急いで薔薇園に行くと陛下はアマーリエ様、クリスティーネ様と御一緒だった。
「陛下、お呼びと伺いましたが」
膝を着き頭を下げると楽にするようにとの言葉が有って立つ事を許された。

「如何なされました?」

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