2部分:第二章
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第二章
また家族に下から呼ばれた。今度はお風呂だった。
それでお風呂にさっと入ってまたテレビを点けた。するとだ。
またしても阪神にとって危険な状況になっていたのだ。何と満塁である。
バッターボックスにいるのは佐伯貴弘だ。横浜の主力選手の一人である。だがこの時彼はお世辞にも好調とは言えない状況だった。
「今の佐伯なら大丈夫かな」
弘泰もそう考えた。この危機は乗り越えられると思った。
そしてだ。危機を乗り越えた後のことも考えたのである。
ピンチの後にはチャンスあり、彼が考えたのはこのことだった。ここを踏ん張れば阪神の逆転の可能性もある、そう意気込んで観たのである。
しかし彼は知らなかった。佐伯にはこうした話があるのだ。
年に数回かなりの美男子になり必ず打つとだ。そしてそれはだ。
今だった。今まさにだ。彼はその美男子になったのである。
その美男子になった佐伯のバットが一閃した。そうしてボールは一直線に飛びスタンドに飛び込んだ。見事な満塁ホームランであった。
「なっ、何でだよ」
弘泰はそのホームランを観て唖然となった。言うまでもなく四点入った。
試合はこれで決定的になってしまった。結局横浜はそのまま試合に勝ちだ。阪神は本拠地において敗れるという屈辱を味わったのである。
彼はだ。観終わってからこう呟いた。肩をがっくりと落としながら。
「何か今日は観る度に相手チームの点が入っていったな」
これが彼の呟きだった。そしてそう呟いてからだ。ベッドに入り寝てしまった。所謂不貞寝である。
これは二〇〇〇年六月一日のことである。この時期阪神は弱かった。とにかくあまりにも弱かった。
その中ではこうした試合もあった。それも実によくあった。所謂暗黒時代である。
阪神の弱かった時代を知る人は誰もが言う。あの頃は本当にそれが永遠に続くかと思ったと。
弘泰も言う。この試合のことも含めてだ。阪神が如何に弱かったかを。
しかしそれでも彼はその時阪神ファンであり続けた。それは何故か。彼は言うのだった。
「阪神が好きだからだよ」
満面の笑顔で言うのである。彼は今も阪神ファンだ。例えこれから何があろうとも。
観れば酷いことに 完
2011・3・29
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