Side Story
無限不調和なカンタータ 8
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、軽い頭痛を覚えた。
「悪かったわね。こんな所まで付き合わせちゃって」
「こんな所って……、貴女ね。アリア信仰の中心部で迂闊な発言はしないでちょうだい。せっかく司教の座に就けたのに、数時間で取り上げられたら、シャレにならないでしょ」
「あら。本来だったら、教皇猊下にお伺いを立てる必要なんかまったくない一国一地方の司教座承認の儀式を、誰も彼もが忙しいこの時期に、わざわざお膝元へ呼びつけてまで恩着せがましく強引に執り行ってくださったのは、完っっ全に神殿側の都合でしょう? 飼い犬の恭順ぶりを確かめる意図でもあるんでしょうけど。迷惑極まりない強行予定表のおかげで、私達は無駄にげんなりしてるんだもの。愚痴くらいは寛容な御心でお赦しくださるわよ」
「程度を弁えなさいと言ってるの! 本当、プリシラは猊下が嫌いねえ」
「ええ。猊下に限らず頭を使わない上司は全員気に入らないわ。どうやって排除してやろうかしら……うふふ、考えるだけでわくわくしちゃう」
「たくましいのは結構なことだけど、手段に溺れて身を滅ぼさないでよ? これでも頼りにしてるんだから」
「解ってる。だからこそ、貴方を協力者に選んだのよ。期待してるわ」
「ええ、努力はしましょう。後輩を扱くのは、私の得意技よ」
二人は聖職者にあるまじき黒い笑みを浮かべて、互いの肩を叩き合う。
産まれる前から彼の近くに居たアオイデーには、何の話か判っているが。
この会話だけ切り取れば、上層部への叛意ありと指摘されても仕方ない。
周囲の無人を承知で話しているにしても、見守る小鳥は内心ひやひやだ。
長い歴史を持つアリア信仰も、決して一枚岩ではない。
二人の野望は多くの敵を作るだろう……主に、上層部で。
早々と目をつけられたら、待っているのは草の根潰しだ。
頼むから無茶はしないでくれと、何度叫びそうになったか。
浅く息を吐いたアオイデーは、賢さと無邪気さを兼ね備えた心優しい男女二人の気を静めるつもりで、小さな『波』を放つ。
すると、彼が気付いて顔を上げた。
「また、この音……」
「どうしたの?」
「……いいえ、なんでも」
彼はカールと違い、子供の頃から『調律』の力に自覚がある。
だからか、音に対して非常に敏感らしい。
だが、金色の目は一度も小鳥の姿を捉えない。
どこからともなく聴こえる旋律に首を傾げるばかりだ。
それで良い。
今も膝を抱えて眠る女悪魔と交わした契約は、彼の存在と健在によって、既に果たされているのだが。
引き続き見守っていても、彼女なら、苦笑いしつつ許してくれるだろう。
きっと、「アンタも大概、物好きなやつよね」……なんて言いながら。
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