Side Story
無限不調和なカンタータ 8
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はこの数十年後、聖天女とよく似た音を纏う女の力で封印された。
おそらく、人間が絶えない限り……もう、目覚めることはないだろう。
それほど強固な眠りに堕ちたのは、他ならぬ彼女がそう望んだからだ。
事実上、世界から存在を切り離し。
あらゆる視線を避けて隠れていたアオイデーの目の前で。
彼女は自ら封印して欲しいと、女に願っていた。
アリア信仰が拠点として築いた、純白の宗教国アリアシエル。
その一番都市リウメに建てられた主神殿の下で。
グリディナは現代でも、深い眠りの底に沈んでいる。
アオイデーが何度となく訪れても、やはり意識が目覚めた音はしない。
あるいはアリアの力に関わらず自身で起床を拒んでいる可能性もあるが。
コーネリアを喪った彼女は、笑っていてもどこか虚ろに見えた。
カールもコーネリアも居ない世界にはもう、心が耐えられなかったのか。
……それでも。
神殿の屋根に降り立った小鳥は、ぴるるっと、美しく澄んだ声で鳴いた。
現代に至るまで、世界がどう転がってきたのかを伝える為に。
望んでいた者がやっと現れたんだぞと、彼女に報せる為に。
アオイデーは、カールとグリディナの子孫達を影で追い続け。
わずかに残る神力を使い、勇者達の鼓動を歌にして彼らに届けた。
せめて音だけでも後世に遺せたら、コーネリアの死は無駄ではなかったと目覚めた彼女に誇らしく報告できると信じて。
ひとしきり鳴いて気が済んだアオイデーは、小さな翼を忙しく動かして、神殿裏の庭園に伸びる一番高い木の枝に飛び移った。
しばらくの間は、この木の枝が宿代わりだ。
いつもなら、すぐさまアルスエルナへと帰るのだが。
今回は、彼が居る。
彼は直立姿勢を保ったまま、何をするでもなく、金色の目で枝葉の隙間に広がる青空を見上げ、腰上まで届くまっすぐ長い金髪を風に遊ばせている。
中性的な顔立ちに、純白の長衣が引き立てる凛とした雰囲気。
まるでコーネリアみたいだと言えば、彼女達はどんな反応をしただろう?
コーネリアが産まれる前……やけに興奮したカールが、珍しく一生懸命に自己主張していた場面を思い出す。
『ずうーっと考えてたんです! これの他には、一歩だって譲れません! 女の子だったら『コーネリア』! 男の子だったら絶対、』
『「アーレスト」』
カールの言葉を継いだ女の声で、意識が現実に引き戻された。
見れば、緩やかに長い金髪と藍色の目を持つ女が、やけに豪華な装飾品を付けた真っ白な長衣の裾を蹴りつつ、彼に歩み寄っている。
物影に隠れてもなお目を惹く、若々しく華やかな男女が並び立つ光景に。
アオイデーは
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