アインクラッド 後編
心の温度差
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と身長が記憶上のリズベットと一致していたため慌てて声を掛ける。しかし聞こえなかったのか、あるいは聞く気がなかったのか、少女はわき目も振らずに駆けて行ってしまった。
前髪をかき上げながら、どうしたものかと思案するマサキ。マサキの足なら少女に追いつくのは難しいことではないが、あの走りようを見るに、何か込み入った事情がありそうだ。何も知らないマサキがのこのこと割り込んだところで、事態は悪化すれど好転することはない。そもそも、それは少なからず事情を知っているであろうエミたちに任せるべきことで、マサキが関知することではないのだ。
「マサキ! おい、マサキ!」
「キリト……? お前まで何故こんなところに」
リズベットと思しきシルエットが街角に消えていくのを見送ったマサキが振り返ると、相も変わらず全身黒ずくめの剣士キリトが凄まじい勢いで駆けて来た。ブーツの底から火花を散らして急停止した彼は、泡を食ったように口を開く。
「今、女の子が走っていかなかったか? えっと、髪がピンクのショートヘアで、服は赤系の、えっと、エプロン……」
「エプロンドレスか?」
「そうそれ! やっぱ見かけたのか!?」
覆い被さるように身を乗り出して詰め寄ってくるキリト。その慌てようを見たマサキの脳裏に、ピンと閃きが走った。
「そこの通りを南に走ってったよ。……しかし何が起こったかと思えば、お前がリズを連れてダンジョン探索とはな」
「え、どうしてそれを……」
「ついさっき、エミからリズが行方不明だって連絡があってな。アスナが一緒だとは言ってたが、お前のことはどこにも書いてなかった。しかも、リズを追って最初に来たのが敏捷値に勝るアスナではなくキリト。となれば、お前がリズとそういう場所に行っていたと考えるのが妥当だろう」
SAOにはフレンド限定の位置追跡機能が備わっており、相手がどこにいるのかを知ることができる。が、それは街や一部のフィールドに限定された話で、ダンジョンや迷宮区にいる場合は機能が使えない上にそのフレンドが《回線切断》――つまりは死亡している場合と同様フレンドリスト上の名前がグレーで表示される。とはいえ戦闘経験などロクに積んでいないであろうリズベットが単独で圏外に赴くとも思えないため、誰かが一緒にいるのだろうとマサキは内心で当たりをつけていた。そして、そこへキリトが現れたというわけだ。
「そう、か……」
キリトは暫し目を白黒させた末、今度は一転して黙り込む。
「行かないのか?」
「……ああ、行く。行くさ」
キリトは何度か首肯したものの、言葉に反して彼の身体が動く気配はない。マサキが怪訝に思いつつ再び促そうと口を開けると、それを遮
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