第十六章 ド・オルニエールの安穏
第六話 ゆめ
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からの人気はないと言ってもいい程だ。
その一方で、士郎の人気は目を見張るものであった。もはやトリステインで知らぬ者はいないと断じていい程である。しまいにはこのような劇まで創られてしまう程に、その人気の過熱ぶりは恐ろしい程であった。そしてその人気と比例し、貴族、特に大貴族と呼ばれる者たちからの士郎への嫌悪感は上がる一方であった。いなくなれば、どれほどせいせいするか。その気持ちは、この場の貴族たち一同の思いであった。
「卿の話はわかりましたが、しかしどうするのですかな? あの男の強さは並大抵のものではありませんぞ。アルビオンでは七万の軍勢をたった一人で追い散らし、ガリアでは数十もの貴族を打倒したと聞く。悔しいがあの男に勝てそうな者はわたしには思いつきませんが」
「ええ、それは承知の上です。ですから、わたくしは一流の掃除人を用意しました」
「掃除人ですと?」
「こういった腕利きをどうにかするための専門家です。その中でも一流の者を用意しました。しかし残念ながら、腕と比例し値も張る。その額はわたくし一人ではどうも……」
「つまり卿は金の無心に来たと、しかし口では何とでも言えるが、その掃除人とやらが、本当に腕利きかわかりませんぞ。高い金を払って失敗したではたまったものではありませんぞ」
そう口にした貴族に同意するように、周りの貴族たちも頷き文句を口にした。金を失う程度ならまだしも、その掃除人とやらが下手な相手ならば、最悪密告され、破滅させられるかもしれない。そんな分の悪い賭けに乗ることは出来ない。
そんな貴族たちの不安や不満をある程度耳にした灰色卿は、しかし焦ったような様子は見せなかった。
「その不満はわかります。ですから、まずはその腕前をご覧にいれましょう」
それどころか灰色卿は、自信満々な様子を見せると、貴族たちに背を向けた。
ついてくるよう肩越しで向けた視線で貴族たちを誘うと、灰色卿は背後の扉へと歩き出した。扉の向こうには、一階に下りる大きな階段がある。そこには、貴族たちがここに来る際連れてきたお抱えの騎士たちが控えているはずだった。お忍びでとは言うが、この場にいる全員名のある大貴族である。警護の騎士たちの腕は並大抵のものではない。そんな騎士たちが総勢三十名が待機している筈だったのだが、扉を開けるとそこには……。
「馬鹿なっ!!?」
「これは一体っ?!」
驚愕の声が貴族たちの口から上がる。
彼らの目に飛び込んできたもの。それは扉の向こうに控えているはずだった三十名からなる手練の騎士たちが全て昏倒していたからだ。倒れた騎士たちはピクリとも動くことはなく、生きているのか死んでいるのかさえわからない。血の匂いや跡がないことから、死んではいないとは思われたが、その安否を確かめようとする貴族は誰一人としてい
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