第十六章 ド・オルニエールの安穏
第六話 ゆめ
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集められた貴族たちは、苦々しい雰囲気を漂わせながら各々頷いてみせる。
「ほう、つまり卿は陛下に諫言されるということですかな?」
期待するように一人の貴族が声を上げるが、灰色卿は首を横に振る。
灰色卿の首が縦に振られるのを期待していた貴族たちが、予想に反して首を横に振られた事に同様を示す。中には、まさか灰色卿は反乱を促そうとしているのでは、と警戒を顕にする。普通では考えられない。が、つい先だってガリアでは王座の交代劇が起こった。もしやあの反乱劇に触発されて、アンリエッタを亡き者とし、王座を手に入れようとしているのでは、と……。
「灰色卿……つまりはどういう事ですかな? あなたのお話は、あなたの呼び名の通り、どうもはっきりとしていないのですが。まさかとは思いますが、我らに反乱を促しているのではありますまいな? 冗談でも口にしてはならないものがありますぞ……あなたは我らに大逆を犯せというのですか……?」
重々しい声で、威嚇するように睨めつけてくる貴族に灰色卿は大げさな仕草で首を横に振った。
「それこそまさか、ですぞ。ご存知の通り、わたくしたちの名誉を保障してくれるお方は、この国の王たるあの方お一人。我らは陛下あってこその存在。そんな我らが陛下を害するなど有りうるはずがない」
灰色卿の言葉に、貴族たち一同はアンドの声と共にこわばっていた肩を緩めた。
「ですから、何よりも陛下の名誉が大事なのです。何故ならば、陛下の名誉が輝きを増せば増すほど、我らの頭上を照らす光もまた増すのですから。そのため、その輝きを曇らせる要因となるものは決して許すことはできませぬ。その結果は全て、我らにも降りかかるのですからな」
ここにきて、集められた貴族たちは灰色卿の話の趣旨を理解したのだった。
「そういうことですか。つまり灰色卿、あなたの狙いは―――」
「ええ、わたくしは陛下の穢れを取り除いて差し上げたい。それを行う者に相応しいのは、他の誰でもない。この国の伝統を守る古き貴族たる我々しかおりませぬ」
「穢れ、と灰色卿は仰るが、その穢れとは具体的には……」
「既に耳にされているとは思いますが、あの平民の男のことです」
灰色卿の視線が貴族たちから外れ、眼下で行われている演劇にへと向けられた。灰色卿の視線に導かれるように、その場の貴族たちの視線も同じように舞台へと向けられる。丁度芝居の中では、一人の剣を持った男が杖を持った男を切り伏せていた。歓声が上がり、貴族の誰かが不機嫌そうな声を漏らす。
平民出の有名人は、銃士隊隊長のアニエスもいるが、彼女はその苛烈な勤めぶりから市民からの人気は低い。若く美しい女ではあるが、その仕事ぶりとニコリともしない愛想の悪さから一部の特殊な性癖の持ち主以外
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