第十六章 ド・オルニエールの安穏
第六話 ゆめ
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結果としてどうやら凛とエレオノールの相性は、水と油と言うよりも、炎とガソリンと言ったところであった。
士郎とセイバーが協力して二人を強制的に停止させなければ、屋敷倒壊どころで済まなかったかもしれなかった。
つい先日の光景を思い出し、ティファニアと同じように士郎も若干引きつった困ったような笑みを浮かべると、誤魔化すように頬を指で掻いた。
「自分でもおかしいとは思っているんだが。まあ、この程度いつもの事だからな。俺のなかではまだまだ平和と感じるレベルだ」
「……お疲れ様です」
士郎のこれまでの人生を思い、そっと心の中で涙するティファニア。
「でも、昨日も屋敷の片付けを遅くまでしていましたし、わたしとお茶を飲んでいるよりも、少し休んでいた方がいいのではないのですか?」
「いや、俺としてはこうしてテファとお茶を飲んでいる方が気が休まるよ」
「そ、そうですか……」
か細い声で呟くと、カップを両手で持ったティファニアが、顔を俯かせ啄むようにカップの縁に唇をつけた。
下げた頭に隠れてはいるが、綺麗な金髪の隙間から見える首筋の白い肌が、真っ赤に染まっていた。が、士郎はそんなティファニアの様子に気付くことなく、雲一つない青い空を見上げていた。
「ああ―――本当に、平和だなぁ……」
タニアリージュ・ロワイヤル座。
その二階の奥には、横に十席ほどが並べられた“ボワット”と呼ばれる特別な観覧席があった。特別席と言われる通り、そこを利用できるものは限られていた。貴族、それも国内でも有数の大貴族のみが利用することを許されていた。
そんな特別席に、劇の開演と共に仮面をつけた貴族たちが一人、また一人と同じ仮面をつけた貴族たちが入ってきた。彼らは互いに挨拶をする事なく、席に着いていく。何よりも人脈を重要視する貴族たちの姿からは、考えられない光景であった。十はある席が全て埋まると、測ったように劇が始まった。演目は最近人気の『アルビオンの剣士』であった。
劇が進み、主人公である剣士が敵役であるメイジたちを切り伏せていく場面となる。と、観客席の奥。一番安い席から歓声が上がる。
「……昨今の歌劇は、随分と品がなくなりましたな」
「ええ、それもありますが、内容も酷いものです」
顔の上半分を覆う仮面をつけているが、その下の感情を容易に想像させる声に、離れた位置に座っていた貴族が頷いた。
最初に感想を口にした貴族の声は、小さな呟き程度の声量であったが、その声は離れた位置にいた貴族の耳にハッキリと届いていた。その理由は、彼らがつけた仮面であった。彼らがつけた仮面は、同じ仮面をつけた者に声を届ける魔法の仮面であった。それは、同じ仮面をつけた者同士ならば
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