第十六章 ド・オルニエールの安穏
第六話 ゆめ
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夏休みに入ると、士郎たちはド・オルニエールの領地に入り浸りになった。士郎とルイズだけでなく、その中には士郎付きのメイドであるジェシカやシエスタは勿論、キュルケやティファニア、そして凛の姿もあった。他にも、何故か学院長の秘書であるロングビルや教員であるカトレアの姿もあった。
彼女たちの目的はもちろん士郎であったが、ギーシュが屋敷の近くで掘り当てた温泉も理由の一つでもあった。どうやら温泉には美肌効果があるらしく、毎日のように彼女たちは温泉に入っていた。温泉の周囲には簡易な囲いがあるだけであり、その事から色々とトラブルも起きたが、まあそれはギーシュたちが強制労働に従事させられるという程度ですんだ。
若い男女(女子の割合が多いが)が集まれば、小さなトラブルが尽きることはないが、それでも士郎がこの世界に来てからの一年間を思えば、穏やかな日日と言える生活であった。
「ああ……平和だな」
「え? へ、平和ですか?」
穏やかな口調のそんな士郎の言葉に、ティファニアが困惑した声を上げた。
屋敷の庭に設置された小さな白いテーブルに向かい合って座るティファニアと士郎。
今日は夏にしては日差しが穏やかであり、風も吹き涼しく、外でお茶をするには絶好の日和。今日はたまたま他の全員に用事があり、偶然にも今屋敷にはティファニアと士郎の二人しかいなかった。そこで、士郎は暇そうにしていたティファニアをお茶に誘ったのだ。
士郎の言葉に困惑するティファニアは、お茶請けのクッキーを口元に運ぼうとしていた指で挟んだクッキーを手元の小皿に置くと首を傾げた。
「あの、シロウさん。一昨日はリンさんが爆発事故を起こしてルイズと屋敷の一部を破壊するような喧嘩をしていましたし。昨日はルイズのお姉さん、えっとエレオノールさんが屋敷に来て凄い騒ぎが起きましたよね?」
「ああ。だが、屋敷は別に倒壊していないし、重傷者も出ていないだろ?」
「そう、ですか……シロウさんの中では、屋敷の一部が吹き飛ぶことや、家具を破壊し尽くすような姉妹喧嘩はまだ平和のうちなんですね」
ティファニアが引きつった笑みを浮かべた。
一昨日の凛とルイズの喧嘩も確かに凄かったが、昨日のエレオノールの一件は更に凄かった。エレオノールは結婚前の男女が一緒に暮らすとは何事かと屋敷に強襲してきたのだが、その時丁度タイミング悪く屋敷にはルイズの他、キュルケ他多数の女の姿があり、その中には自身のもう一人の妹であるカトレアもいた。勿論エレオノールがそれを見逃すはずもなく、一体全体これはどういう事だと激昂する羽目となった。屋敷を揺るがすような怒声を放ちルイズだけでなく屋敷にいたキュルケたちを叱りつけるエレオノールを、屋敷に潜む悪魔が見過ごすわけはなく、ここに出会ってはならない者たちが出会ってしまった
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