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真田十勇士
巻ノ三十 昌幸の智略その一
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                 巻ノ三十  昌幸の智略
 幸村は徳川家の軍勢を細かいところまで見てだった、そのうえで上田に戻った。そうして昌幸と信之のところに参上してだった。
 家臣達と共に己が見たものをありのまま話した、そしてだった。
 そのうえでだ、昌幸に対して尋ねた。
「どうされますか」
「まずは民達を隠れさせよ」
 昌幸は幸村に落ち着き払った声で答えた。
「田畑も刈ってな」
「そのうえで、ですか」
「そうじゃ、民百姓を全て安全な場所まで隠れさせて」
「使えるものは全て与えず」
「そのうえで徳川の軍勢を上田に入れる」
「手筈通りですな」
「うむ、まずは正面からは戦わぬ」
 昌幸の言葉は落ち着いたままだった、微動だにしない感じだ。
「決してな」
「この上田の城や砦を拠点として」
「逐次攻めよ」
 そうせよというのだ。
「主に夜に山からな」
「敵陣に弓矢を放ち」
「鉄砲も使うのじゃ」
 それもというのだ。
「そして忍の者達も使え」
「そうして徐々にですか」
「敵を攻めよ、しかしな」
 ここでだ、昌幸はこうも言った。
「攻めるのは軍勢の者達ではない」
「軍勢の心ですな」
「人や城を攻めるのは下計じゃ」
 昌幸は孫子の言葉も出した。
「しかしな」
「心を攻めるのは上計」
「だからじゃ。ここはじゃ」
「夜に山からですな」
「物陰等からな」
「軍勢を攻め」
「それを続けてじゃ」
 そうしてというのだ。
「敵の心を疲れさせるのじゃ」
「それがこの度の戦の仕方ですな」 
 信之も言って来た。
「敵の心を攻める」
「数は敵の方が多く武具もあちらの方がよい」
「そして敵将の鳥居殿も勇将」
「ならばじゃ」
 それだけ揃っているのならというのだ。
「正面から戦うのは愚策じゃ」
「勝てませぬな」
「ましてや上田は山が多い」
 昌幸はこの地のことも話した。
「平地は少ないな」
「はい、確かに」
「では正面より戦うよりもな」
「山から攻める方がよいですな」
「隠れてな、そうしてじゃ」
 敵を徐々に攻めてというのだ。
「心を乱す、そして兵糧や武具もな」
「襲いますな」
「そうすれば尚よい」 
 徳川家のそれをというのだ。
「民に食いものも全て持って行かせるからな」
「兵糧を奪われれば最早仕入れる場所がない」
「そして人夫も飯炊きもおらぬ」 
 民を就かせるそれもというのだ。
「戦が出来なくなる」
「だからこそ」
「ここはそうして攻める」
 徐々にというのだ。
「敵の心をな」
「少しの数の軍勢を少しずつ出していき」
「常に攻める、そして攻めてすぐにじゃ」
「下がらせる」
「そうした戦をしていく、進むのは山道じゃ」
 そうした道を使うという
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