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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十四話 慢心
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れた事だった。この世界でも484年の状況は変わっていない、同盟軍が優勢だった。にもかかわらず昇進していないのは前年のアルレスハイム星域の会戦の敗戦が響いているとしか思えない。
484年の成果は前年の敗戦の穴埋めとしか認められなかったのだろう。ヴァンフリートで原作より一個艦隊多く動員したのは此処で勝利を収めれば元帥になれると思ったのではないだろうか。失敗したロボスは落胆したろう。当分元帥になれない、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥にも追いつけない、追い抜けない。
そんな時、ウィレム・ホーランド、アンドリュー・フォークがイゼルローン要塞攻略案を提案してきた。ロボスにとっては起死回生の一手に見えたろう、その気負いが五万隻の動員になっている。ヴァンフリートも今回のイゼルローン要塞攻防戦もロボスの元帥への執着から発生しているとしたら、当然原作とは違ってくる。もっと早く気付くべきだったのだ。今回のイゼルローン要塞攻防戦はかなり危険だ。ロボスにはもう後が無い。此処で失敗したらシトレとの差は決定的なものになる。なりふり構わず来るだろう。
ロボスが元帥への執心で多くの兵に犠牲を強いようとしているのなら、ロボスと門閥貴族達は何処が違うのだろう。結局政治体制など関係なく、権力者の虚栄心、権力欲で犠牲者が出るということか。ヤン・ウェンリーが権力者になることを欲しなかった気持ちがわかるような気がする……。今回の戦いは勝たなくてはならない。ロボスの元帥への執着をへし折るのだ。中途半端な勝ち方ではない、圧倒的に勝つ必要が有るだろう……。
■ジークフリード・キルヒアイス
ラインハルト様は連日回廊外に出撃を繰り返している。上からの制限を受けることなく自由な裁量権を持った事でここ二十戦以上、ラインハルト様は勝ち続けている。様々な戦術を試し、ラインハルト様も楽しそうだ。イゼルローン要塞へ戻り、補給と休息を済ませ出撃しようとしていると、作戦参謀ヴァレンシュタイン准将がやってきた。傍には女性士官が付いている。彼女が副官のフィッツシモンズ中尉だろう。背は准将より高い。赤みを帯びた褐色の髪でなかなかの美人だ。
「ミューゼル少将、これから出撃ですか。随分と武勲も立てられているようですが」
准将はこちらの事を知っているようだ。
「ああ、意外に歯ごたえの無い連中だ。色々な戦術を試す事で役立ってもらっている」
「まるで遊猟でもなさっているようですね」
「そんなつもりは無い」
皮肉を言われたと思ったのだろう、ラインハルト様の声が硬い。
「それならよろしいのですが。今日はどのポイントへ出撃なさるのですか?」
「ABA140ポイントだ」
「そうですか、敵も馬鹿ばかり揃っている訳ではないでしょう。お気をつけください。御武運を祈ります」
そう言うと、准将
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