第3章 黄昏のノクターン 2022/12
36話 黒刃の鷹、赫眸の将
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スキルアシストに乗った袈裟斬りは、予想通り下段から跳ね上がるような刃と衝突して凄まじい反発力を両手に伝える。ともすれば麻痺にさえなってしまいそうな一撃を懸命に押さえつけると、将軍の双眸は噛み合う剣に向けられた。ソードスキルさえ用いない通常攻撃でありながら、その重さは大剣や両手斧と見紛う破壊力を備えているようにさえ思える。到底、一介の片手剣使いである俺の手に負えるような相手ではない。その証左に、鍔迫り合いの様相を呈していた双方の剣が呆気なく躱されるが、今回は正攻法が通じる相手ではない以上、隠し玉で応戦する他ない。
――――故に、生憎とここで終わらせてやるつもりもない。
「ッシャァァッ!!」
鍔迫り合いが解け、刃を振り降ろさんとする将軍の懐に敢えて踏み込む。
剣とは、その刃に最大の殺傷力を有する武器だ。如何に遠心力を纏い、必殺の威力を誇る凶刃となろうとも《その一撃を繰り出した当人までは凶刃たりえない》のだ。どんなに速く、鋭く、重い剣を繰り出そうとも、その懐は安全地帯なのである。
しかし、もし相手も攻撃できない間合いでありながら、その困難に阻害されない軌道でこちらが一方的に攻撃できるのだとしたら……
畢竟、それを使わない手はないのだ。
「……クッ!?」
袈裟斬り、つまりは斜め斬りを行使するソードスキルは広く《スラント》が認識されている。片手剣というポピュラーな武器に加え、その使い手であれば誰しも一度は使ったことがあるというほどに親しまれたものだろう。しかし、その上位版である二連撃技が存在するのだ。
片手剣二連撃技《スラント・アーク》の繰り出す後の閃。途切れかけたスキルアシストを強引に続行するテクニック――――初撃で生んだ相手の隙を狙い、強引に追撃を捩じ込む秘技《剣技克破》に任せた逆袈裟気味の一撃は将軍を微かに呻かせるも、あえなく見切られてしまい背後に大きく跳び退られて回避されてしまう。
だが、将軍とはいえモンスター。このヘイトが俺に向けば当然《周りが目に入らなくなる》ことだって有り得るだろう。俺も将軍だけを視界に捉えていたこともあって、それが幸いした結果となった。
――――その回避した先に、盾を構えた幼女が居たことを。
「オオオオオオオオオォッ!!!」
裂帛の怒声、大気を震わせる幼女の咆哮は将軍に攻撃を察知させるものの、既に黒銀色のライトエフェクトを纏った金属の塊は加速を開始しており、止まることはないことを暗に報せる。
そして、事前情報として確認していた内容と照らし合わせるところによれば
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