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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十三話 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ
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「あと三日でオーディンに着きます。多分中尉は何日間か亡命の経緯などを尋問されるはずです。これを読んでおいてください」
彼は私に三枚ほどの文書を寄越した。

「これは?」
「私とリューネブルク准将で考えた亡命の経緯です。准将が中尉を保護した事になっていますからね。辻褄を合わせておかないと可笑しな話になる」
なるほど、確かにそうだ。

「自由惑星同盟の言葉で書いています。覚えたら破棄してください。いいですね」
「はい」
彼はそのまま出て行ってしまった。親切な男では有るようだ。

 オーディンに着いた途端、私はいきなり何処かの建物に連れて行かれた。後でわかったのだが、情報部に連れて行かれたらしい。そこで亡命の経緯を調べられた。私は大佐が作成してくれた資料に基づき話をした。取調官はおざなりに調べただけで開放してくれた。もっとも亡命が受け入れられ、官舎が与えられるまで十日ほどかかった。そして私はヴァレンシュタイン准将の副官になった。人事局でヴァレンシュタイン准将の副官を命じられ、部屋を出るとそこに准将がいた。どうやら私を迎えに来てくれたらしい。

「ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中尉です。今度ヴァレンシュタイン准将の副官を拝命しました」
「よろしく頼みます、中尉。思ったより早く出られましたね」
「そうなのですか」
「ええ、普通は情報部でもっと取調べを受けます。今回はセレブレッゼ中将やムーア中将がいますからね。そちらから情報を取る事に主眼を置いているようです。運が良かったですね」

なるほど。あの二人が持っている情報に比べれば、私の情報などゴミのようなものだろう。
「閣下の新しい役職は決まったのですか?」
「ええ。宇宙艦隊司令部の作戦参謀を命じられました」
すごい。目の前の少年?は本当にエリートなのだ。
「よろしいのですか。小官を副官にして」
「まあ、いいんじゃないんですか、とりあえずは」
本当にエリートなの? ちょっと自信が無くなってきた。

 准将が新たに作戦参謀に任じられた頃、帝国では出兵計画が練られていた。八月末が作戦開始となるらしい。准将は宇宙艦隊司令部に着任するや否や出兵計画の作成に携わることになった。副官である私もそれに携わる事になる。はっきり言って其処は帝国軍の機密の宝庫だった、同盟の参謀将校や情報部の人間が知ったら眼の色を変えただろう。この機密をいつか役立てる事が出来るのだろうか。いつか同盟に帰る事が出来るのだろうか。とりあえずは此処の機密を頭の中に入れることが大事だろう。リューネブルク、いつかあんたに吠え面かかせてやる。あんたの大事な准将にもね。

 当然周囲の人間の私を見る眼は厳しかった。司令部には五十人以上の士官が参謀として作戦立案に携わっている。ほとんどの士官が亡命者がなんでこんな所に
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