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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十三話 ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ
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なっても一人で生きて行くのは大変です。男の自分でさえ苦労しました、女性ならなおさらでしょう」
「確かにそうかもしれません。…しかし良い方法がありますか」
「どうでしょう。参謀長は今回の武勲で将官になるのは間違いないでしょう。副官が必要ではありませんか」
「…彼女を私の副官にですか」
「そうです」
そういうことか…。つまりリューネブルクは私を目の前の大佐に差し出したわけだ、これからも大佐との繋がりを強めるための貢物が私だ。
「……」
「失礼ですが、参謀長の立場では副官を見つけるのはなかなか難しいかと思いますが」
「…そうかも知れません」
「それならいっそ彼女をどうです」
「…そうですね、そうしますか」
面白いじゃないのリューネブルク、この屑野郎。あんたの思い通りになるかどうか思い知らせてやる。
私はこの後、亡命希望者として艦隊旗艦オストファーレンに移された。
旗艦オストファーレンに移された後、私はまたしばらくの間放置された。ようやくやって来たのはヴァレンシュタイン大佐ではなくリューネブルクだった。
「残念ね、リューネブルク准将。あの綺麗な貴族のお坊ちゃまは全然来ないわよ」
出会い頭の皮肉にもリューネブルクは全然動じなかった。
「はあ? お前何を言っている? 彼は貴族じゃないぞ」
「え、貴族じゃないの?」
「彼の名は、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン。平民だ」
「嘘! だって貴族でもなけりゃ、あんな子供が大佐で参謀長なんてありえないじゃない」
そうだ、ありえない。
「彼は実力で大佐になった。ついでに歳は二十歳だ、子供じゃない。この艦隊の司令官はお飾りでな、それこそお前の言う貴族のお坊ちゃま、いや御爺ちゃまだ。この艦隊を事実上動かしているのはヴァレンシュタイン大佐だ。宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の肝いりで参謀長になった」
ゲッ。宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥の肝いり? 何者なのあいつ。
「…信じられない」
「今、大佐はこの間の戦闘の戦闘詳報を作成している。とてもお前に構っている暇は無かろうよ」
「……」
「お前、変なことを考えてなかったか?」
「変なことって」
「俺がお前を大佐に差し出したとか」
「……違うの?」
途端にリューネブルクは爆笑した、眼から涙を流すほどの大爆笑だった。
「俺は女を差し出してまで出世しようなどとは考えておらん。しかし、それも悪くないかもしれんな。彼は情に厚い男だし、お前を惨く扱うような事は無いだろう。将来性も有るし、頑張るんだな」
彼はそう言うと”いや、これは楽しくなってきた”、”彼も女運が悪そうだからな”などと笑いながら部屋を出て行ってしまった。
彼が私の部屋にやって来たのはオーディンにつく三日前の事だった。
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