魔物と君との間に割って入る
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を抜いて、腹の筋肉に力を込めて止血する。苦悶に呻きながらも大男は歩みを止めなかった。リューの前に出ようとする。彼が生きているのは一重に膨大な経験値エクセリアによって作りかえられた彼自身の鋼の肉体によるものである。
「ここは私が引きつけます!歩けるのならどうか…、お願いですから皆さん逃げてください…!」
「分かってるんだろうッ?」
団長が吠える。
「っ…!」
リューは団長の鬼のような迫力に言葉を詰まらせる。団長は続けて言った。
「もう俺たちは上層まで走るほどの余力はないッ。サポーターのバッグに入っていた備蓄のハイポーションは怪物進呈の時に全て割られたッ」
「やめて…!やめてッ!!」
耳を塞ごうとするリューに団長が檄を飛ばす。
「聞けッ!」
「あぁぁ……あ…」
「五体満足なのはお前だけだ。…ゴホッ。頼むリュー。お前だけでも逃げてくれ…!」
聞きたくない聞きたくない。リューが小声でつぶやく。
「そうよリュー!ここは私たちが死守するわ!命に代えてでもねッ!」
ルウが負傷した片足を引きずりながら立ち上がって言う。
頭が真っ白になった。背中を向ける。団長に怪物が襲いかかるのが見えた。景色がスローモーションのように流れる。
走れ!走れ!!
他のパーティに泣きつくんだ。ポーションを分けてもらって、助力を乞うんだ。絶対に皆んなを助ける。
(本当に助けられるのだろうか?)
(無理じゃないのか)
(出来るわけがないだろう?)
負の感情がふつふつと湧き上がる。
「うるさいッ!!!」
かぶりを振る。喝を入れる。この角を曲がれば仲間たちは見えなくなる。
(このまま…見捨てるしかないのか…?)
崩れ落ちそうになるのを太ももを殴って必死で堪える。突然、天井の一角が崩れ落ちた。。
「ぐほぇっ!?」
武器も持っていない、赤髪の軽装な少年が、天井に空いた穴から落ちてきた。
「ぐほぇっ!?」
痛い。
打ち付けた尻を擦りながら、俺は立ち上がる。
「まさか落とし穴があるとは―――ん?」
顔をあげると、そこには目に涙をためた少女がいた。
いや待て、何でそんな泣いてんの?もしかしてぶつかった?
「っ!貴方はポーションをお持ちだろうか!?持っていたら譲ってほしい!頼む!」
「うえ!?」
何かを思い出したのか、少女が俺の肩をつかんで揺すってくる。
「うぐあぁああ!!」
「っ!?」
「団長!」
前方から悲鳴が聞こえ、そちらへ視線を向ければ怪物の大群に襲われている団体がいた。
「やっべ!」
ソレを見た瞬間に俺は飛び出した
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