第一話
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そのまま携帯端末を操作し、今いる場所の地図を立体映像として写し出した。
ヤザワは地図を持つと、宙に浮かぶ映像に合わせる。
「こことここがぴったり合います」
彼の言った通り、かすかにはずれてはいるものの、それは誤差といえる範囲内だった。ほぼ一致しているといえる。
「地図によれば……このデリラ山脈の中腹にあるはずの洞窟を指しています」
「おいおい。デリラ山脈は別名〈奈落の山脈〉と言って、現地人のウルムン人さえ近づかない場所だ」一度ため息をついてガユスの言葉は続く。「しかも、今ウルムンは、独裁者ドーチェッタによる圧政で治安がエリダナの裏路地より悪くなっている」
「だからこそ、宝がありそうじゃないですか。だれも入らないところなんていかにもですし」
何とかガユスを説得しようとヤザワは言葉を重ねていく。
「険しい山登りにもうってつけの物もありますし」
自身の後ろにあるバックを指さす。宝珠の回路と指示式が描かれた咒符がバックの口元の周りにびっしりと張られていた。
「数法量子系第三階位迷家取得鞄のバックか。それがあれば確かに楽だろうな」
ガユスの目線の先にある鞄は、見た目とは裏腹に内部が約七立方メルトルの広さがある。原理としては、塗料に入っている重元素粒子を咒符が制御して、鞄の内部に位相空間を作り上げ内部を拡張している。
「まだ容量に余裕がありますし、最悪は高速移動すればすぐに目的地に着きますよ」
ヤザワも何とかガユスを頷かせようと、説得を続けていく
そんな熱意にガユスも折れた。
「分かった。食料と咒弾、念のために医薬品を仕入れてから行こう」
「過酷と言われる山脈に登るのです。念入りな準備に手を抜いたりしませんよ」
彼の提案にヤザワは頷く。早速準備をし始めたのか、どこかへ電話を掛けるのだった。
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