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逆さの砂時計
Side Story
無限不調和なカンタータ 7
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 頬が、今まで見た中で一番、赤く染まってる。

「………の、……ら……」
「? はっきり言いなさいよ」

 何をためらってるのか。
 もごもご小さく唇を動かしても、発音しなきゃ聴こえないっての!
 どうせ、こういう時のこいつはくだらないことを考えてるんだろうけど。
 大方、性的な

「僕とグリディナさんの子供だったら、僕達と同じ、音の力や歌声を持って産まれそうだなって。それなら、僕に何かあっても、その子が……」

 ………………………………。

「グリディナさん?」
「…………あんたねぇ……」

 空いてる右手で額を押さえつつ、目蓋を伏せ。
 心の奥底から深く長く盛大に息を吐き捨てて。
 カールの手をパシッと払い除ける。

 目で確認するまでもなく、動揺した気配。
 ったく、軟弱男め!

「素手で素肌に触るのも恥ずかしがってるクセに、私を孕ませられるの? そーいうのは、最低でも胸を鷲掴みにして平然と揉みしだくくらいの度胸を身に付けてから言いなさい!」
「は、はらまっ!? わ、わし……っ!?」
「伐った木!」

 パッと顔を上げ、左手の甲を腰に当て。
 右手の人差し指を、怯むカールの鼻先にビシッと突きつける。

「一本も残さず持ち運べる大きさに裁断しなさい。その作業が終わるまでに私を説得できたら、帰郷の付き添いでも結婚でも、全部受け入れてやるわ。でも、あんたにそうするだけの価値は無いと判断したら村には帰さないし、結婚もしない。生きる時間の長さに拘らず、歌えなくなるまでこの森からは一歩も出さないから! 解った!?」
「え……、えぇ……っ!?」
『お前、そんな声高に、口説いて欲しいとか言わなくても……っ』
「違う! ()()って言ってんでしょ、()()って!」

 おろおろと両手を上げ下げするカールの肩の上で。
 ふるふると全身を小刻みに震わせるアオイデー。

 わりと本気で殺気を込めて睨んでるのに、笑ってんじゃないわよ!
 つくづく腹立たしいヤツ!

「えー、っと……うん。解った。木を切りながら、グリディナさんと一緒に帰りたいって説得すれば良いんだね。あ、でも、胸を鷲掴み、……とかは、その……ちょっと……」
「それは良いから。」

 私の鎖骨辺りをチラッと見てすぐに逸らした視線が、逆に痛々しい。
 こんなんでよく、子供がどうのと口走れたものね?
 情けない!

 ……まあ、『カールの歌なり私の特性なりを継いだ子供』に揺らいだのは否定しないけど。
 自我を持つ前にあれこれと仕込んでおけば、私の頭痛止め第二号として、それなりに期待できそうだし?
 私とカールの外見を合わせたら、悪魔寄りでも人間寄りでも、男女問わずかなりの美形になりそ…………
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