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女人禁制
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第一章

                    女人禁制
 新宿歌舞伎町のある店は女性は絶対に入ってはいけない決まりになっている。バーなのだがそれでもだ。女の人は何があっても入ってはならないとだ。それは強く決められているのだ。
 このことを守って誰もその店には入ろうとしなかった。少なくとも女の人は誰でもそうだ。しかし禁じられていると言われればだ。何が何でも入ってやろうと思う人間がいるのも世の中である。 
 この彼女もまたそうした考えの人間であった。つまりはへそ曲がりと言うか根性曲がりと言うかひねくれ者と言うか。とにかくするなと言われたことは是非やってみないと気が済まない、そうした困った人なのである。
 その人がだ。女人禁制とそれはそれは強く言いしかもそのことで新宿では知らぬ者がなくなっているその店に向かいだ。そのうえで店の扉の前に来たのである。
 扉にだ。はっきりと書かれていた。しかも大きな文字で丁寧に日本語だけでなく英語や中国語、あげくにはスペイン語まで使ってだ。
『女人禁制』
 こう書いてある。しかし今の彼女にはだ。
 そんな言葉は最早挑発に過ぎなかった。彼女をさらに燃え上がらせる、そうした類の言葉に他ならなくなってしまっていた。そう、彼女はまさに今燃える女になっていたのだ。禁じられたことをあえてやろうとする、タブーにあえて挑む、そうした勇気と言っていいのか蛮勇と言っていいのか。とりあえずそうしたものに支配されてだ。そのうえで今扉に手をかけたのである。
「法律で罰せられるわけでも殺される訳でもないじゃない。だったら何が怖いっていうのよ」
 彼女にしてみれば学生時代に酒を飲んだり煙草を吸う方が余程凄いことであった。尚彼女は酒は飲んでいたが煙草は吸わなかった。理由は興味が湧かなかったからだ。
 その彼女は遂に扉を開けた。そうして店の中を見るとだ。魔界があった。地獄と言ってもいい。
 男達、それこそ筋肉ムキムキ、胸毛に脛毛に脇毛に腕の毛、口髭はまだ優しい方で顎鬚はもじゃもじゃ。スキンヘッドの男までいる。

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