暁 〜小説投稿サイト〜
舐め終わってから
舐め終わってから
[2/2]

[9] 最初
ての反論だった。
「飴舐めて歯磨きって。どうやってするのよ」
「とにかくどっちかにしなさい」
 あくまでこう言って引かない母だった。この辺り実に強い。やはり母は強しである。
「いいわね」
「ちぇっ、じゃあどうしろっていうのよ」
「どっちかにしなさい」
 飴を舐めながら反論する娘への反論への反論だった。
「どっちかにね」
「どっちかにって」
「それでどうするのよ」
 母の問いはこれまで以上に決断を迫るものだった。かなり強い口調になっている。
「あんた。どうするのよ」
「ううん、そうね」
 まだ飴を舐めている。それは終わりそうにない。裕美子は進退窮まった。 
 風呂か歯磨きか、それが問題だった。とりあえず飴を舐め続けることは許されそうにもなかった。それで遂に進退窮まったのである。果たしてどちらにすべきか、まだ風呂の方が飴を舐め続けられるのではないか、ふとこう考えた。そしてそう考えるとであった。
 彼女はそちらに傾いた。そうしてだ。
 母に対してだ。こう言うのであった。
「わかったわ。じゃあね」
「どっちにするの?」
「ここは」
 言おうとした。しかしであった。
 そこで飴がだ。舐め続けていてかなり小さくなってしまった、先程よりもさらに小さくなってしまったそれがだ。喉の中に落ちてしまったのだった。
 そうなってしまってだ。裕美子はだ。
 拍子抜けした声でだ。母にこう言った。
「今ね」
「今?どうしたの?」
「飴玉飲み込んじゃった」
 こう言ったのである。確かに飲み込んだ形になる。
「どうしよう」
「どうしようって。飲んだのよね」
「うん、飲んじゃった」
「じゃあどっちにするの?」
 母親はそれなばらだとだ。裕美子に対して問うてきた。拍子抜けした感じの娘の言葉とはだ。全く違っていた。
「ええと、とりあえずお風呂かな」
「お風呂にするのね」
「飴。なくなったから」
 それでだというのだ。その懸念材料となってしまっている飴がなくなってしまえばだ。彼女にしてもだった。
 どちらかを選ぶしかない。そうしてであった。
 彼女はお風呂を選んだ。そのうえでお風呂場に向かいまずは服を脱ぐのだった。
 その服を脱ぎながら。考えることといえば。
「お風呂からあがったら。今度はメロンのにしようかな」
 お風呂からあがっても飴を舐めようと考えていたのだ。それから歯を磨こうと思っていた。何につけてもだ。彼女はまず飴ありきりだった。そんな女の子だったのである。


舐め終わってから   完


                    2011・4・14
[9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ