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真田十勇士
巻ノ二十九 従か戦かその十四

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「七千といったところか」
「ですな、それ位ですな」
「数は七千」
「そして槍は長く」
「鉄砲も弓矢も多いですな」
「よい軍勢じゃ」
 その武具の様子を見てだ、幸村はこうも言った。
「足軽達も身体つきがよく引き締まった顔をしておる」
「よく訓練されていますな」
「徳川家といえば兵も強者揃いですが」
「これはまた、です」
「かなりですな」
「うむ」
 そうだとだ、幸村は答えた。
「戦になれば侮れぬ」
「ですな、兵は強いです」
「武具もいいですし」
「これはです」
「強いですな」
「そうじゃな、そして敵将は」
 兵を叱咤激励し進ませているその者はというと。
 幸村はこれまで以上に強い声でだ、その将の顔を見て言った。106
「鳥居殿か」
「鳥居元忠殿ですか」
「勇将と誉れ高い」
「その鳥居殿ですか」
「そうじゃ、確かに徳川殿はおられぬ」
 徳川家の主であり名将の誉れ高い彼はだ。
「お姿も馬印もな」
「はい、確かにです」
「徳川殿ご自身はおられませぬ」
「そのことも間違いないですな」
「そして四天王の方々もな」
 徳川家の中でも第一の名将である彼等もだった。
「となたもおられぬ、しかしな」
「鳥居殿もですな」
「徳川家の中でも勇将」
「だからですな」
「この度の戦は容易ではない」
 こう家臣達に言うのだった。
「兵の数も多いしな」
「では」
「すぐに上田に戻り」
「大殿にお伝えしましょう」
「若殿にも」
「そうするぞ」
 家臣達の言葉に頷いてだ、幸村は徳川家の軍勢を細かいところまで見てだった。そのうえで家臣達と共に上田に戻ったのだった。戦がはじまろうとしていた。


巻ノ二十九   完


                      2015・10・24
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