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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十三話 会見
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憲法を創る事で帝国と皇帝、政府、臣民の関係を規定し勅令で臣民の権利を保証する、そうしたいと思っています。そのためにも市民の権利を重視する同盟人の見識が必要だと考えているのです」

なるほどと思った。目の前の若者は帝国を専制君主制から立憲君主制へ移行しようとしているのか。
「議会を創る考えは有りませんか? 皇帝権力のチェック機関として」
ホアンが提案すると元帥が口元に笑みを浮かべた。
「議会制民主主義を、特に選挙による議会制民主主義を考えているなら無駄です。導入するつもりは有りません」
元帥の眼が冷たく私達を見据えていた。先程まで有った友好的な雰囲気は無い。冷徹な目、雰囲気だ。これがこの男の本質だろう。そしてこの男は立憲君主制は目指しても議会制民主主義には否定的だ。

「三十年後、統一国家新帝国において反帝国感情に溢れた旧同盟市民と反同盟感情に溢れた旧帝国臣民が口から泡を飛ばして言い争う姿など見たくありません。私は人類が抱えている政治制度による対立を解消したいと考えているんです。そのために三十年かけて統一しようとしている。そこを理解してください」
「……」

「政治制度に拘るのは止めて貰います。人類は百五十年もの間それが原因で戦い続け大勢の戦死者を出してきた。馬鹿げていると思いませんか?」
「……」
「私はシャンタウ星域では一千万人以上の同盟市民を殺しました。今回の遠征では出来るだけ戦死者を出さないようにした。少しでも流血を少なくし敵意や憎悪を募らせないためです。貴方方にはそういう気持ちは分かりませんか?」
「……」

私達は答えられなかった。自由惑星同盟は後三十年の命だ。それは仕方が無い事なのだろう、同盟は国家としての命運を使い果たしたのだと思う。だが政治制度、思想は残したい、そう思ったのだが……。エゴなのだろうか? 人の権利を守る思想が人の対立を生む。そして殺し合いになるのだとしたら……。我々人類は今まで何をしてきたのだろう?










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