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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百八十三話 会見
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も笑い出した。そんなに笑う事は無いだろう、二人とも。でもトリューニヒトの立場よりはましに違いない。

三人でホテル・カプリコーンに行くと直ぐにヴァレンシュタイン元帥の執務室に通された。ちょっと安心した、待たされずに済む、向こうはこちらに敬意を払っている様だ。部屋に入るとヴァレンシュタイン元帥が笑みを浮かべながら出迎えてくれた。黒いマントと軍服、しかし穏やかな表情からは軍の実力者には見えない。

「ようこそ、トリューニヒト議長。そちらのお二人を紹介していただけますか?」
「もう前議長ですよ、元帥。私の後任となるジョアン・レベロと彼を補佐するホアン・ルイです。私の政権では財政委員長と人的資源委員長を務めていました」

ヴァレンシュタイン元帥が私とホアンを見ている。不思議な表情だ。確かめるように私達を見ている。ソファーに座り紅茶を飲みながら歓談した。紅茶を出してくれた副官は部屋から出て行った。部屋には我々四人しかいない。三対一、信用されているという事だろうか。

「帝国としては同盟を追い詰めるつもりは有りません。無理なく統一に持って行きたいと考えています」
「無理なくと仰いますが統一そのものが同盟を追い詰めるとは思われませんか?」
ホアンが問うとヴァレンシュタイン元帥は頷いた。

「否定はしません。しかしそれは同盟政府に乗り越えて貰わなければ……。私が言っているのは故意に同盟を追い詰める事はしないという事です」
「……」
故意か、故意に追い詰められればどうなるのだろう? 市民は暴発し混乱する、或いは強制的に統一が早まる可能性も有るだろう。対立が、怨恨が残ったままの統一か。確かに望ましい事ではない。ヴァレンシュタイン元帥が“御不満ですか?”と訊ねて来た。不満か、こちらに配慮しているのは理解出来る。しかし納得出来るかと言われれば答えはノーだ。私だけじゃない、皆がそう答えるだろう。

「自由惑星同盟はルドルフ大帝に対するアンチテーゼとして存在しました。今の帝国はルドルフ大帝の負の遺産を清算しつつあります。門閥貴族は力を失い劣悪遺伝子排除法は廃法になった。同盟政府の言う暴虐なる銀河帝国は存在しなくなったのです。アンチテーゼである自由惑星同盟もその存在意義を失った。そうは考えられませんか?」

「存在意義ですか、仰る意味は理解出来ますが……」
「感情では納得出来ない」
「そうです」
「だから三十年かけようと言っています。今直ぐ納得してもらう事を望んではいません」
手強いと思った。トリューニヒトの抵抗をまるでものともしない。

同じ想いなのだろう、ホアンも溜息を吐いている。
「国体はどうなりますか? 主権は……」
「勿論、皇帝主権ですよ、レベロ議長。だからと言って皇帝は全てが許されるという形にはしたくありません。私としては
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