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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十九話 ヴァンフリート4=2 (その4)
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「やりましょう」
上手くいくだろうか、時間が稼げるだろうか。残り二時間、長い二時間になりそうだ……。



 帝国軍遠征軍がイゼルローン要塞をへて首都オーディンへ帰還したのは五月十五日のことだった。
ヴァンフリート4=2の会戦だが、グリンメルスハウゼン艦隊は偽電を発信後、三千隻を残し、一万隻を率いて同盟軍の後背に出た。ヴァンフリート4=2に来ていたビュコック艦隊は挟撃されることを恐れたのだろう。こちらが後背に出る前に撤退した。ミュッケンベルガーは後退する敵に追撃をかけたが、決定的な打撃を与える事は出来なかった、掠り傷程度だろう。

ちなみにグリンメルスハウゼン艦隊は一発も撃つことなく終わった。後に判ったのだが第十二艦隊はすぐ近くまで来ていたらしい。第五艦隊から、第十二艦隊へ撤退するとの連絡が入ったそうだ。第十二艦隊はそのためヴァンフリート4=2への進撃を止めた。

 この会戦が両軍が干戈を交えた最後の戦いになった。同盟軍は補給基地を失ったためこれ以上ヴァンフリート星域にこだわる必要性がなくなった。また、帝国軍の方が兵力が多くその点でも積極的に交戦を求めようとはしなかった。ミュッケンベルガーは消化不良気味だったろうが、それでも退き時はわかっている。第一、結果を見れば大勝利なのだ。両軍とも自然とヴァンフリート星域から撤退する事になった。

 基地攻略の戦果は大体原作どおりだった。基地司令官のシンクレア・セレブレッゼ中将が捕虜になった。捕獲者はラインハルトだった。リューネブルクはやはり白兵戦をやったらしい。ローゼンリッターとやりあったかどうかはわからない。だがそれより困った事は妙な捕虜を連れてきたことだった。

ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中尉、シェーンコップの愛人の一人だ。なんでも基地内でばったり出くわしたらしい。リューネブルクは武器を奪ってとっさにヴァレリーを突き飛ばした。そして”此処は女のいるところじゃない何処でもいいから逃げろ”といった、此処までは良かった。問題はヴァレリーが足を挫いていたことだった。

彼女は涙目になって”動けないわよ、この間抜け、どうしてくれるの”と怒鳴ったらしい。進退窮まったのはリューネブルクだった。女に泣かれるわ、怪我をさせるわ、罵られるわで気がつけば帝国軍の艦の中に連れて来ていた。

何考えてるんだよ、お前。ヴァンフリート4=2に放り出しておけば同盟軍で拾って行っただろうに。俺は断言する。ワルター・フォン・シェーンコップとヘルマン・フォン・リューネブルクの違いは実力ではない、女運だ。シェーンコップは子供を作っても養育費がかからないのに、リューネブルクは原作ではエリザベートなんて何処か頭の壊れた女と結婚して酒びたりになるわ、今回はシェーンコップの女を拾ってくるわ、一遍お祓いして来い!


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