圏内事件 ー聴取ー
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アスナが穏やかな声で話しかけた。
「……今一番疑わしいのはあの槍を鍛えた、グリムロックさんです。けど、誰かがそう見せかけようとしている可能性もあるけど、それを判断するためにグリムロック氏に直接会って話しをする必要があるんです。居場所か、連絡する手段に心当たりがあれば、教えて頂けませんか?」
アスナにジッと見つめられ、シュミットの上体が僅かに引いた。
「アスナが、ここまで言ってるんだからさ。何かあるなら言った方がいいと思うよ?事件が解決すれば、PKの手口だって分かるんだし。……ね?」
ぐらつくシュミットに追い打ちをかけるようにシィが言葉を発した。
身長の高いために、意図せずして上目遣いで女性二人に見つめられる事となった彼は、ぼそぼそと話し始めた。
「……居場所は分からない。だが、あの人が異常に気に入ってたレストランなら知っている。ほぼ毎日通っていたから、今でももしかしたら……」
「ほ、ほんとか」
自信なさげなシュミットの発言にキリトが食いついた。
ここアインクラッドにおいて『食事』という行為は唯一の快楽と言っても過言ではない。今では《料理》スキルを習得したため、あまり足を運ばなくなったNPCレストランだが、毎日通うほど気に入った店ならそう易々と断ち切れるとは考え辛い。
「うっ……おなか空いた」
「…………」
キュルキュルと腹の虫を控えめに鳴かせたシィを『少しは空気を読め、馬鹿!』とメッセージを込めて半目で睨む。
緊張感の欠けたやり取りで、微妙な雰囲気が漂っていたが、キリトが咳払いを一つし、リセットすると話し合いを再開させる。
「……それで、その店の名前は?」
「教えてもいい。但し、一つ条件を呑んで貰いたい。…………ヨルコに会わせてくれ」
議論の結果、シュミットとヨルコを会わせる事が決まり、その主旨を彼女にメールで伝えると即座に返信があり、了承の返事が貰えた。その際、結果をシュミットに伝えるとあからさまにホッと表情を緩ませた。一応、万が一の事態に備え、場所を彼女の泊まる宿屋に移す事となった。
なお議論の最中、会話についていけてないシィが理解する事を早々と諦め、近くの屋台で買い食いをしていたのはまた別の話だ。
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