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八神家の養父切嗣
二十一話:愛ゆえに
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 救えなかったんじゃない―――救おうとしなかった』
「……うん、そうだね」
『だから、私達はずっとこんなところに居る。ケリィが諦められるほど頑張らなかったからいつまでたっても消えることもできない』

 何かに全力でぶつかって、その上で不可能だと諦めるのならば諦めがつく。
 しかし、衛宮切嗣は救いたいと願いながら、一切の労力を割くことなく見捨てた。
 機械であればそれで何の問題もなかった。だが、彼はどこまでも弱い人間だった。
 だから、諦めることができずに彼らを忘れることができない。
 衛宮切嗣は彼らの死を一欠けらたりとも認めることができていないのだ。
 
 この夢は彼を苦しめるものであると同時に彼の願望を叶えているのだ。
 死者との再会。そこでの懺悔。さらに彼らが自分を八つ裂きにしてくれるのなら最高だ。
 だが、そんなにも都合の良い夢など見ることはできない。
 懺悔をする権利などないと彼自身が思い、己の欲望を抑えるから誰も彼を罰しない。
 彼らはただ願うだけ。救いを求めるだけ。衛宮切嗣の中で死ぬことすら許されずに。

『私達はケリィの願いを言ってあげているだけ。ケリィが私達を助けたいと思い続けているから助けてって言ってる。おかしいよね。ケリィは私達を見捨てたのに』
「僕は……みんなを救いたかったんだ。誰にも涙してほしくなかった」
『うん。その過程でどれだけの人に絶望を抱かせたんだろうね』

 彼女の言葉に表情が酷く歪む。忘れてしまえば楽になれるだろう。
 折れてしまえば、罰を自らに課してしまえばどんなに楽になれるだろうか。
 しかし、そんなことはできないからこうして苦しみ続ける。
 誰も傷つかず幸福を保つ世界はない。そんなことはとうの昔に理解している。
 だというのに、闇を直視できず平等という綺麗事を、弱者の戯言を言い続ける。
 結局のところ、彼の理想は醜さを覆い隠すだけの言い訳に過ぎない。
 それでも、それだけは諦められなくてこんな歪みを抱き続けている。

「せめて……君達を助けることができるのなら。もしも、生き返らせることができるのなら……」
『その時はやっと死ねるかもしれないね、ケリィ』
「そうだね。本当は……息をするのも辛くてしょうがないんだ」
『でも、それは全部ケリィのせい。私達のせいじゃない』
「うん、だから……本当にどうしようもない」

 夢の中の彼女は本物の彼女ではない。切嗣が生み出した幻想に過ぎない。
 だからこれは、自分自身との対話と変わらないのだ。
 一刻も早く死んでしまいたい。だが、背負ったものがある以上は死ねない。
 彼らの死を価値のあるものにするまでは死ぬことすら許さない。
 そのことでどんなに自分が苦しもうとも全ては自業自得。
 自己という概念を切り捨
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