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真田十勇士
巻ノ二十九 従か戦かその九
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「そうしたことを全て確かめてからじゃ」
「抜かりはない様にする」
「それが肝心ですな」
「そうじゃ、戦をするのはそれからじゃ」
 抜かりがない様にしてからというのだ、兵糧や武具のことも。
「城や砦で壊れている場所もあればな」
「今のうちになおしておく」
「そちらもしておきましょう」
「それでな、そして民達じゃが」
 昌幸は彼等のことも話した。
「戦になれば逃げる様に伝えよ」
「巻き込まれぬ様に」
「その様にですな」
「飯も農具も全て持っていってな」
 ここでだ、昌幸はにやりと笑って言った。
「そうしてじゃ」
「では徳川の兵が来ても」
「飯はなく」
「そして農具は戦にも使えますが」
「それも持って行かせますか」
「そうせよと伝えよ。あと徳川の兵達に会って道等を聞かれてもな」
 そうした場合についてもだ、昌幸は話した。
「適当に答えよと伝えよ」
「徳川の軍勢に出鱈目を、ですな」
「教えさせますか」
「そうさせよ、そして徳川の軍勢を乱させるのじゃ」
 民達にもというのだ。
「そうすればじゃ」
「はい、徳川の軍勢は乱され」
「満足に動けませぬな」
「その通りじゃ、そしてな」
 ここでだ、昌幸は幸村を一際強い目で見据えてだった。そのうえで彼に対して告げた。
「源四郎、御主の家臣達じゃが」
「はい、あの者達ですな」
 幸村も父に確かな声で応えた。その目の光を強くさせて。
「あの者達を使えと」
「そうじゃ、あの者達は忍でもあるな」
「忍の術も天下屈指の者達です」
「それならばじゃ」
「あの者達にも働いてもらいますか」
「忍としてな」
 是非にという口調であった。
「そうしてもらう、わかったな」
「さすれば」
「忍も使ってな」
 智略の中にというのだ。
「全ての手を打っていくぞ」
「わかり申した、それでは」
「徳川の軍勢はまず一万も来ぬ」
 昌幸はこの読みも言った。
「七千か、そして徳川殿も四天王も来ぬ」
「徳川家で最も強い」
「その方々は来られぬと」
「そして伊賀者もな」
 徳川家の忍の者達のこともだ、昌幸は話した。
「あの者達の主力も上方、羽柴殿の方に向かっておってな」
「そして、ですな」
「こちらに向けられるのは余った者達」
「そちらのこともですな」
「頭に入れておくべきですな」
「そういうことじゃ、敵の質のこともな」
 わかっておくべきだというのだ、そして。
 そうしたことを話してだ、そのうえで。
 昌幸は実際に二人の息子を軸としてだった、戦の用意を進めさせた。幸村は十人の家臣達を連れてだった。
 上田の領内を隈なく歩き回りだ、城や砦の内外を確かめた。城や砦の壊れている場所がないかということや兵糧や武具のこともだ。
 細かく調べ壊れている
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