竜と詠む史は
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いつまでも子供だとおおもってりゃ痛い目を見る。子供達が自分の意思で何かを望めるような、そんな環境に整えてやるのが俺ら大人の仕事だろう。お前さんみたいな侍女に出来ることは限られてるし行動も制限が掛かってると思うけどさ」
「親殺しなど――」
「何も殺せってことじゃない。ま、俺に出来ることは此処までだ。ただ……安穏と暮らしてりゃいつかは誰かが救い出してくれる、なんて甘えは捨てとけ。自分が強くならないと世界は変わらない。弱いのが嫌なら自分が変わらないと……世界は変えられないのさ」
「……その通り、でしょうね」
「他の使者にも同じこと言ってるが……俺からの提案を一つ。お嬢様同士、そんで侍女同士でも繋がりを持ってみな。色んな人間と繋がっとくと便利だからさ。んじゃ、もう行け」
「……一応、心に留めて置きます。ではさようなら、黒麒麟殿」
「ああ、二度と会う事も無いだろ。お嬢様を大切にしろよ」
言われずとも、と言葉を残した侍女の背を見送り幾分……見えなくなった所で彼は一つ伸びをした。
音を鳴らして伸びる背骨が心地いい。ずっと座っていたから、伸ばせた膝もジワリと暖かくなった。
ほう、と息を一つ付いて今回の使者への感想を口から述べた。
「男が有利な俺の世界じゃあるまいし、此処は女が有利な世界なんだ。望んだら望んだ分だけ、きっと自分の周りを変えられるさ」
自身の生まれ育った世界との差異を、そっと口に出す。誰にも聞こえないからこそ。
政略結婚の道具として用いられる少女であっても、この女が強い世界ならいくらでもやりようはある、彼はそう思う。
幾人モノ使者の対応をして、幾人もの少女から話を聞いた。
繋がりを深くする為に、と来た彼女達ではあったが、皆イロイロな悩みを抱えている者達ばかり。
彼が行ったのはただの聞き役。アドバイスと言えるようなモノはあまりしていない。ただ単に、そっと心に自身の思想を説いただけ。
結局生きるのは自分自身で、世界を変えるのも変えないのも自分次第。
何かをしたいと望むなら、自分が変えてやろうと言う意思を持てと。
傷だらけの身体を見て少女達は何を想うか。
心の底から思っている事だけを言う彼の話を聞いて、まだ無垢な少女達は何を感じるのか。
長い長い視点で物事を見た事柄。益州に対する楔の一つ。それもこれは……乱世に対しての策ではなく、治世に対しての策。
いつか乱世が終わって今の少女達が大人になった時に華開く……そんな策。
彼にとっても有意義な時間であった。何せ、少女達ならず侍女たちまでも、ある程度の言の葉を交わせたのだから。
彼女達の主に報告をするならそれでも良かった。別に引き込むつもりで喋っていたわけでもないのだ。彼がこの益州で行う全ての行動は……もはや終わって
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