竜と詠む史は
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かってても、もうちょっと節度ある行動ってもんがあるはずでしょ? だからボクのは当然の怒りで、ヤキモチなんかじゃない」
自分で口に出してまた恥ずかしさが込み上げた。
違うといいつつも、この胸のもやもやはそういった苛立ちとは別としか思えない。
時間が来たと呼びに行く度に見た彼の姿を思い出して、その感情がまた大きくなる。
膝の上に少女を乗せて物語を聞かせていたり、眠ってしまった少女を優しげな眼差しで起きるまで頭を撫でて待っていたり、兵士達が暇つぶしに使っている玩具で楽しげに一緒に遊んでいたり……。
ぼふ、と枕を叩いた。一回、二回、三回叩いて漸く止める。
自身の恋心は認めているが、自分よりも年下の少女に嫉妬など……言い聞かせて治めようとしても治まらない。考えても考えても治め方が分からない。
益州という遥か遠き大地にて自分だけが側にいることで、独占欲が強まっているのだ。
まだ淡い恋を始めたばかりの彼女は気付かない。雛里や月が居ないから、今だけは彼の一番は自分だと無意識の内に認識しまっている。
悶々と悩みながら枕に顔を埋め、今日はどんなイラつくことをしているのかと気になって仕方ない。
大きなため息が零れた。心の内側から吐き出されたそれは枕に溶ける。
――欲張り、だよね。ボクのことを見て欲しいなんて。
雛里や月が居ない今だからこそ、鎌首を擡げた独占欲は止まらないのか。
いや、きっとそれだけではない。
――ううん……あいつが消えちゃうかもしれないから……
黒麒麟と徐公明のハザマで揺れる不安定な状態を見てしまえば、焦燥感がジクジクと心を染め上げるのも当然のことで。不安の影がついて回る現状、詠は自身の焦りを把握する。
――繋ぎ止めたくて……仕方ない。
急に、彼女は雛里や月に会いたくなった。
心細い。弱気が湧き立つ。あの昏い瞳を思い出せば、自分だけではやはり足りない、と。
詠は強気になんでも熟すと思われがちだが、軍師という立場上、一歩引いた物事の扱い方をする性分であり、自分が一番前に立って何かを行うという事はあまりしない。
あくまで補佐的な役目に主点を置き、高い視点から物事を見て、その上で最善を見極める。そういった遣り方こそが彼女の真骨頂。
故に、今回のことも、自分がなんとかしようと思っても、やはり自分だけではと思ってしまう。
これではダメだ、と彼女は頭を振った。別のことに思考を回せば、鬱屈とした感情も振り払えるだろう。
――……益州の戦略については問題ない。朱里と公孫賛が帰ってきた時点で益州は終わる。
戦略行動はもはや終盤。後は何もしなくともいいのだ。
――バカ達が持って行った手紙がそろそろ効く頃合いだろうし、劉備軍も動かざるを得ない
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