竜と詠む史は
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来た縁談を受けるはずもない。
しかし面白くないのも事実。初めは恐れていた少女達であっても、彼の緩い空気に取り込まれてしまえばもはや手遅れ。甘いお菓子と拍子抜けするほどくだらない彼の話を聞いて、徐公明に対する評価を上げて行く。
数時間だけの邂逅で、少女達をその気にさせる。付き合いとしての酒も飲むし、膝の上に座りたいと誰かが言えば座らせる。気を抜いている体を見せる為にデレデレした顔もする。演技だと分かっていても、詠は面白くない。
捨て駒かもしれない少女達であれど、彼の側に引き摺り込めるなら重畳。どれだけ小さな繋がりであっても、彼は利用し組み立てる。分かっているからこそ、詠は不機嫌さを出して彼に何も言えないのだが。
つまるところ、ただの……
「……なんだ、ヤキモチかよ」
「っ……ち、ちち、違うわよっ!」
「はぁ、心配して損した」
呆れた、と言わんばかりに猪々子が首を振る。耳まで赤くして睨みつけてくる詠を可愛く感じて、彼女は小さく鼻を鳴らす。
「ま、アニキはその辺お堅いしいんじゃね? 幼女趣味って言われてるけど軽々しく手ぇ出したりしねぇし。女と寝台共にしてなんにもしないような男なんだからさ。
ってかそんなに嫌ならアニキと毎日でも一緒に寝て詠の匂いを擦りつけてやればいいじゃん。アニキは自分のだーって」
「ば……ばっかじゃないの!? なんでボクがそんなこと……」
「遠慮するってのも分かる。でもあたいは好きな人には一番に見て貰いたいもん。あたいだったら絶対そうする」
「あ、あんたと一緒にしないで!」
叩こうと手を振るも宙を切る。
怖い怖い、と避けておどけた猪々子がペロリと舌を出した。
「一応言っておくけど、明のやつも惚れかけてるぜ?
あいつって本気出したらアニキを監禁して堕とすくらい平気でするから気ぃつけな」
「んなことさせないわよっ!」
「えー、それじゃアニキの困った顔見れないじゃん。明も友達だからどっちに協力しよっかなぁ〜♪」
「あ、あんたねぇ!」
「おっと……そろそろ交流終了の時間だ。理由も分かったし今日はあたいがアニキを呼びに行こうっと♪」
天幕の入り口にそそくさと駆け、上機嫌な猪々子がひらひらと手を振る。
睨みつけてもどこ吹く風。もはや先程までの殺気など出せるはずもなく。真っ赤な顔ではただの少女にしか見られていなかった。
「覚えてなさいよ」
「聴こえなーい♪ んじゃ」
しんとした静けさは、耳に残る騒がしさの残滓を際立たせる。大きく深呼吸をして心を整えようとしても、詠の顔の火照りは全然取れて行かない。
なんとなく、なんとなく座っている気になれなくて寝台に横になった。うつ伏せで枕に顎を置き一人ごちる。
「……ふん、なによ。あんなやつ。仕事だって分
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