竜と詠む史は
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しょう。
桃香様が私達の策に気付かれたので、名声や人からの目を気にしない方とはいっても、それが余計に彼らの不満に繋がるかもしれません。桃香様ご自身も不和を読み取っているでしょうし、第一の策は明らかに失敗となりました。彼が、曹操軍として此処に来た時点で」
「……っ」
失敗、と言われて愛紗は唇を噛みしめた。
益州に来た時に、桃香が提案したのはたった一つ。武力でなく信頼で、言の葉で、態度で、心で、平和を築こうと。
ゆっくり、ゆっくりと進めてきた懐柔策。人々に受け入れて貰おうと必死になってきた。小間使いのような扱いを受けようとも、下賤な言葉を投げ掛けられようと、人々に受け入れられるように。
桃香の提案を朱里は是とした。第一の策、とすることによって。
武力を用いない侵略行為はおおむね成功といっても良かった。後二つでことは成ったのだ。
孫呉への救援、南蛮の平定による名声強化。それに伴っての益州での発言権の裏返し。
声を大にして未だ反発している有力者の説得は秒読み状態だった。内側から浸透する毒……民の支持はもはや止まらないのだから。
民衆という圧倒的多数の支持を受けている桃香の力は揺るがない。劉備軍という明確な力を持っていることも大きい。益州内部でもう劉備軍に敵うモノは居ないのは、黄忠と厳顔が敗北を認めたことによって、皆が理解している事でもあった。
――桃香様の元である程度の暮らしを……そうやって諦観に向かわせるつもりだった益州豪族の心を、彼は抗いの心にすり替えてしまった。元々考えていた第二の策に……強制的に移行させられてしまった。
このままでは乗っ取られる、と不安の煽りを受けた豪族達はどうするか。決まっている。武力を用いて排除しようとするだろう。
それを理由として立つ事が出来れば、益州は丸ごと桃香のモノに出来たのだ。益州の臣下達に桃香を認めさせる為に戦い、従えて、諦観させる。勢力をわが物とする為に一番手っ取り早いのはやはり、戦なのだから。
つまりは、秋斗達が仕掛けているのは益州平定を加速させる策でありながら、桃香個人の思想をうやむやにし、身内同士の禍根という毒を残させる策である。
劉璋が一声上げれば、無理やり有力者たちを抑えつけることは出来る。大きな、とても大きな蟠りを残すことにはなるが。
そんな状態で曹操軍と戦えるのか否か……どちらが上か分からない劉家、割れている臣下達、歩調の合わない勢力が戦を行えば、どんな結果が待っているかは言うまでもなかろう。
協力する、と口では簡単に言えても、それは非常に難しい。欲望を持っているからこそそのむずかしさを彼らも良く知っている。
だから彼は、最も簡単にコトが済む方法を益州の臣下達に知らしめたのだ。孫呉と手を汲もうとしている漢の敵で、劉璋を誑かして
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