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シークレットゲーム 〜Not Realistic〜
出会い
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分の首は切られ、動脈を絶たれ……、その瞬間、鮮血が吹き出し、直ぐに自身の命は終るだろう。……何もできずにあっさりと。

 そして、最後に思うのは……嘗て自分のために命をくれた最愛の人の顔だった。

「(ごめん……、彰。あたし……、何も出来なかった)」

 それは、前回……、自分の代わりに命を差し出した愛しい人。
 今回は自分が、彼の代わりに理不尽と戦う為にここに来たというのに、自分の無力さがただただ腹立たしかった。

 走馬灯の様に、彼との思い出が頭の中を廻る。理不尽に抗い続けようと決めたあの瞬間も……。

 だけど……出来なかった。悠奈の目元に涙が溢れ出しそうになっていた。

 その時だった。自分の首筋から冷たい感触が離れていったのは……。

「……悪いが、これは渡せない。お前がそうであるように、オレにもすべき事があるからな」

 男はそう一言 言うとダガーナイフを鞘に収め 懐にしまい込んだ。そして、立ち上がると倒れこんでいる悠奈を引っ張り上げる。

「……じゃあな」

 そう一言言うと、離れていった。

「え………」

 悠奈は、あっけに取られた。
 自分は何をされても、文句は言えない。寧ろ殺されたって不思議じゃない状況だった。

 当然だ。

 いきなり銃を突きつけて 相手の武器まで奪おうとしたのだから。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 悠菜は、去っていく男を慌てて引き止めた。

「……ん? まだ 何か? この銃は何を言われても渡さないぞ」

 男は足を止め振り返る。

「何で……、何で何もしないの?」

 悠奈はそう聞いていた。
 悠菜のそれも当然の疑問だろう。自分は相手に銃を突きつけ、あまつさえは武器を奪おうとしたのだから。……何を言われても されたとしても文句は言えない。

「……何もしない?」
「そ、そうよっ! あたしは、アンタに銃を……、それに武器を奪おうとした。……殺されたって文句は言えない。なのに……」

 女は俯きがちにそう言う。
 ……随分と難儀な性格のようだ。いや、普通の人間であれば疑問に思うのは当然の事、だろう。こんな異常空間だと言えどもだ。

「ああ。成る程な。ふむ……オレにとっては、猫に牙を、爪を 向けられたようなもんだ。そんな事でいちいち怒るほど短気な性格じゃなくてな」

 男は軽く笑いながらそう言う。
 冗談は得意ではない筈なのだが……この時は自然と言えていた。冗談ではなく、実際に感じた事だから。

「なっ!! って ね、ねこっ??」

 まさかの発現に思わず声が裏返ってしまう悠奈。……と言うか、こんな風に話す印象は無かった、というのが正しい。

「ああ。……まぁ、猫ほど可愛げがあるとは思えんがな。猫
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