慟哭のプロメテウス
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は、弾丸は完全に弾かれ、『吸血鬼』の肉体が溶け出すこともない。どうやら、一度受けた攻撃には耐性が付くらしい。
だが青年は、何を思ったのか、効かないはずの銃弾を何度も何度も発射する。当然効果はない。男は仁王立ちのまま、全てを弾き返した。
やがて、攻撃が止まる。弾切れ、だ。
「……」
「ふはははははははッ! 残念だったな。貴様の力も驚嘆に値するが、我の方が上回ったようだ」
男の右手に、黒の波動が集まっていく。また、破壊の光だ。愚直だな、と思わなくもないが、同じように愚直に銃を乱射し続ける己が言えたことではない、と、青年は思い直した。
「惜しいが……死ね。『抹消砲哮(デリート・バズーカ)』!!」
ずぁぁぁッ!
不気味な音を上げて、黒の光が青年を襲う。直撃すれば、消滅は免れ無いだろう。
恐らく。
これまで、この『侯爵級』と戦ってきた討伐隊の者達は、この一撃にやられたのだろう。
戦闘開始から、男は殆どその場を動いていない。端から見れば、男と青年の戦いは非常に地味だ。両者ともに遠距離攻撃が主体であるが故に、ほぼ全くその場を動かないのだから。
それは裏を返せば、男は『動く必要がない』という事でもある。圧倒的な防御力と、驚異的な回復力。それが合わされば、なるほど、回避も追撃も要らない。アウトレンジから闇のレーザーを放ち続ければ、勝ちだ。
しかし青年は、余裕の態度で呟く。
「でもそれは、オレの専売特許だ」
そして、次の瞬間。
弾切れになったはずの右の銃と、魔銃では無い筈の左の銃が──同時に、文字通り火を噴いた。
火炎は一直線に闇とぶつかると、それらとぶつかり合い、混じり合う。踊るように。躍るように。
「む!?」
男は、まさか己の一撃が防がれるとは思っても見なかったのだろう。驚きに声を漏らした。しかし黒の光が炎を飲み込むと、再びふてぶてしい表情に戻る。
──だが。
その余裕は次の瞬間……青年が、唱えたその直後に、再び崩れることとなる。
「溶け落ちろ」
消滅。
いや──融解、と言った方が正しいのかもしれない。
黒の波動は、一瞬にしてドロドロに溶け、消え去った。
変化は、術者にも表れた。
「ぐ、ぐおぉぉぁぁああぁ!?」
青年が目を向けると、『吸血鬼』の貴族は、その身体中を押さえて蹲っていた。
見れば、体の至るところが溶け始めているではないか。
知っている。
それを引き起こしたのは、青年の力だから。
「き、さま……その銃……魔道具などではない、な……!?」
「気付かれた
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