慟哭のプロメテウス
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に青年を狙って来るではないか。
これが、『吸血鬼』が強大な存在である理由のひとつ。人間の扱えない魔術を、自由に操れること。「魔術そのもの」であるが故の特権。
ただ闇雲に光線を乱射するだけに見えて、着々と青年の逃げ場を奪ってくる『吸血鬼』。しかし青年は慌てない。ゆっくりと右手を、右腰のホルスターに近づける。
そして、抜銃。左手のそれと同じ、しかし決定的に違う『ソレ』を。
「──溶けろ」
銃弾が吐き出される。それは凄まじい速度で男に迫り、その体を、いともたやすく貫通した。
「ぐ……っがぁぁぁぁッ!?」
ジュウ。
着弾地点から、不気味な音が聞こえた。
男の肩が。貫通された傷が、じくじくと溶けていた。まるで、溶岩の中に突っ込んだかの様に。
「これ、は……!? 魔術すら弾く我の体が……まさか!?」
驚愕の表情を浮かべて、男は青年を見る。
「その銃……『魔道具』か!! それにこの威力は、紛れもない『禁書級』……!」
「悪いな、手の内はなるべく明かさない主義なんだ。ノーコメントってことで頼む」
青年が飄々と返すと、男は楽しそうに笑った。
『魔道具』は、人類が大地を離れているその間に、地上に置き去りにされた文明──その遺産だ。人類が地上を離れたのは、大地の崩壊が理由だったとされている。そんな世界の危機を生き残った物体だ。まともな、見た目通りの性能をしているわけがない。
発見するのは非常に困難。しかし手にいれれば、間違いなく役に立つ。それが『魔道具』だった。中でも上位『吸血鬼』すら屠ることを可能とする、非常に協力なそれを『禁書級』と呼ぶ。
男は、青年の銃をその『禁書』と推測した、ということだ。
しかし青年は答えをぼかす。男もそれは気にしない。
「貴様が奥の手をひとつ見せたのだ。我も見せよう──『甲皮膚再生(リペア・アーマー)』!!」
男の『刻印』が輝く。刻印魔術の真価──その秘めたる力の解放たる、『魔術行使』。
みるみるうちに、男の体が再生していく。まるで傷など無かったかのように。
「ほう……」
青年は感心の声を漏らした。なるほど、お喋りな性格であるのに『侯爵級』まで登り詰められたのは、恐らくあの力のお陰なのだろう。中々突破できない硬い体と、それをすぐに再生させる能力。そしてそれを、一応は使いこなせるだけの実力。
用途が限られているとはいえ、二つの効果をもつ刻印は非常に強力だ。素直に称賛に値する。
だが──まだ、遠い。
「溶けろ」
二発目。右の銃口が火を噴いた。
「無駄だ!」
しかし今度
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