九十九 新たなる
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『音の五人衆』の死の偽造。
例外があるとは言え、それらを行いつつ、ダンゾウとの取り引き且つシカマルを口止めした当の本人は、静かに眼を伏せた。【念華微笑の術】で、捕らわれた鬼童丸と右近・左近に連絡を取る。
二人が無事だと確認した後、ナルトは背後を振り仰いだ。
「君麻呂、多由也、次郎坊」
それぞれの名を呼べば、世間的には死者と見做されている三人の少年少女は項垂れていた顔をゆるゆると上げた。
かなりの障害があったものの、自由の身となった三人――君麻呂・多由也・次郎坊。
彼らと眼を合わせ、ナルトはおもむろに問う。
「これで、晴れて自由の身になったな。三人とも自分の望む場所へ…」
「僕の居場所は、ナルト様のお傍だけです」
「当たり前だろーが!」
「……右に同じ…」
途端、口々に返ってきた答えに、ナルトは眼を瞬かせる。
言葉を発しないナルトに焦れたのか、矢継ぎ早に語り出した彼らの話を要約すると、ナルトの許へ行きたいからというのが最大の目的なのだという。
相談も無く、いきなり大蛇丸の下から抜け出す計画を立てていたのは驚いたが、そもそも自分のところへ来る為に起こした行動だと聞いて、ナルトは眼を細めた。
それだけ自分を慕ってくれるのはやはり嬉しい。その一方で、どことなく不安な想いもナルトにはあった。
何故、自分のような愚か者について来たがるのだろうと。
「…――とりあえず、」
ようやっと口を開いたナルトの前で、寸前まで好き勝手にしゃべっていた三人の口が途端にぴたりと閉ざされる。
沈黙し、ナルトが次に話す言葉を待っている風情に、彼は思ず口許を緩めた。微笑む。
「これからも、よろしくね?」
同行の了承を得て、君麻呂・多由也は喜色満面の笑みを浮かべる。わかりにくいが次郎坊もまた、いつもの強面をやわらげていた。特に多由也の頬は歓喜によって桜色に染められている。
代わりに、宙を舞っていた桜の花弁が逃げるように飛び去っていった。
ナルトは空を仰いだ。
どことなく夏の気配を思わせる澄んだ青が、彼の蒼い瞳に映り込む。その青に、ナルトは波風ナルを思い出した。
どうか今回の件で、彼女が心を痛めないように―――そう願いを込めて、ナルトは上空に浮かぶ白き雲を見上げる。
遠く遠く白絹のように伸びた雲の向こう。
その先にあるだろう木ノ葉の里を、ナルトはただ、静かに見つめていた。
春はもう、終わりを迎えようとしていた。
そして、始まりを告げようともしていた。
巡る季節と、そしてこれから待ち受ける廻り合わせ。
その開始の合図を、一陣の疾風が音も無く掻き鳴らしていった。
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