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渦巻く滄海 紅き空 【上】
九十九 新たなる
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シカマルは気づかわしげに撫でた。苦しげに喘ぐ想い人の小さな背中を、彼は唇を噛みしめながら見つめる。

今から自分は伝えなければならない。あまりにも残酷な現実を。


「…まず最初に―――ネジ・いの、キバと赤丸は大丈夫だ。重傷を負った奴は一人もいない」
「…ッ、そっかァ…」
淡々とした声で告げるシカマルの報告を聞いて、ナルは肩の力を抜いた。へにゃり、と微笑む。
「皆、無事だったんだな………よかった…っ」

心底安堵するナルの笑顔から、シカマルは顔を逸らした。この顔をこれから曇らす事になるとわかっているからこそ、彼はナルの顔を直視出来ない。
視線を逸らしたまま、シカマルはわざと明るい声音で言葉を続けた。

「お前は知らないだろうけど、途中で参戦してくれた奴ら…ヒナタとシノも無事だ。お前を助けた我愛羅も。皆、一緒に木ノ葉へ帰って来ている」
いのを助けたサイの名前をシカマルはあえて口に出さなかった。そこまで言う必要性は無いだろう、と彼は判断した。なにより、彼女の憂いをこれ以上増やしたくなかった。


「シカマル…」
「まだ本調子じゃねぇだろ。もう寝ろ。メンドくせーけど眠るまで此処にいてやっから、」
「シカマルっ!」
服裾をぎゅっと引っ張り、ナルが催促する。わざと話題を変えようとするシカマルを逃がさないとばかりに、彼女は指に力を入れた。

「二番目からの質問に答えてないってばよ……アマルは?」
「………………」
「サスケは……?」
自分の服裾を引っ張るナルの指先を、シカマルはやんわり外した。
不意に立ち上がり、窓辺へ近寄って、彼はカーテンの合間から覗き見える里を眺めた。
「シカマル!!」

ナルの再三の問いかけに、シカマルはようやっと口を開いた。
その声音は寸前とは一転して、尖ったものだった。
「…残念だが、」


その一言で、ナルは全てを察した。


けれどもシカマルの次なる無情な一言に、彼女の顔は更に強張る。震える己の拳を押さえ、シカマルはまるで他人事のように言葉を続けた。
「アマルとかいうお前の友達、サスケ…それに、」
そこで彼は言葉を途切れさせた。次に言わなければならない名前が出てこない。


どうせいつかは知る羽目になるのだ。今言わないと、とは思うものの、ナルが悲しむと理解しているからこそ、シカマルは躊躇する。
暫しの狼狽の後、しかしながら彼は意を決してその名を口にした。


「サクラが、里を抜けた」
「………は?」
思った通り、唖然としたナルは、次いで渇いた笑みを口許に貼り付かせた。

「なに言ってんだってばよ…?サクラちゃんが、なんだって?」
「……………」
「シカマルっ!」
「サスケを追ってサクラが里抜けした、って言ったんだよッ」
シカマルはもっ
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