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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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厚な扉がぎぃっと開くのを横目に、男は怪物を仰ぎ見る瞳で上司を見詰めた。レイモンドは有無を言わさぬ強い口調で言う。

「・・・この計画に妥協は許されんのだ。それが人の生死を冒涜するものであるにしろ、小さき問題に過ぎん。あの計画が成就すれば紅牙大陸は真の統一を果たす。これはそのための通過点だ、分かるな?」
「は、はっ。秩序ある平和の為に、手段を行使する手を一つ増やす。その思想は理解できておりますが・・・しかし・・・」
「理解だけでは留まらん、納得しろ。・・・それとも、貴様が落ちるか?」
「めっ、滅相も無い!私は心より貴方々の崇高な御計画に賛同しておりますっ、はいっ!帝国の為ならば、この命、常に捧げる次第でありますともッ!!!」

 興味なさげに視線を二つの化け物に戻した事に安堵しつつも、心は一向に安らかにはならない。隣に立って得体の知れぬ深謀を覗かせる老人が、ただただ恐ろしい存在に見えてならなかった。

(・・・わ、私は、一体何をしているのだ?何故此処まで手を突っ込んでしまったのだ?唯一時の栄華があれば、それで充分だった筈なのにっ・・・!!)

 欲に釣られて入り込んだ世界が是ほどまでに凄惨で人道から外れるものと知っていれば最初から入りはしなかったと、男は数年前の無知な己に言い聞かせてやりたい気持ちでいっぱいであった。禿げた頭に苦悩の脂汗を浮かせていると、墓地への扉が再び開いた。付き添いの兵士まで動員したのか、荷車に幾つもの死体を載せて数人の男がそれを運搬していた。形程度の保存処理がされているため死体は腐っておらず、俄かに腹を膨らませて肌を黒ずんだものにしているだけだ。
 広間に立ち込める刺々しい気に圧されて兵士等が顔を引き攣らせる。それらをさっさと帰して、騎士は勇気を奮って言う。

「も、持って参りました」
「宜しい。其処の穴から順々に落としていけ」
「はっ・・・」

 騎士は壁に掛かっていた鎖の取っ手を下げる。鎖の隣の石壁がずずずと上昇していき、荷車一台が楽々と入れるほどの大穴を見せた。それはきつい傾斜を抱きながら広場の方へと貫いている。騎士はその傾斜に従うように荷車を押し込んだ。がたがたと車輪を叩かせ、重なり合った死体を震わせて荷車が降下していく。
 最下部の部分、滑り台のように盛り上がった場所を基点として、荷車が軽くひゅんと宙へ飛んだ。車体を軽く捻らせながら荷車が地面に落下して転がっていき、盛られた死体がばたばたと地面に撒かれていく。黒い体液が地面に撒かれた砂を穢し、ごろごろ転がった車が地面を掘り進んで、両者の真ん中で止まった。

「おっ、落ちましたぞ・・・」
「黙っておれ。直ぐに結果が見える」

 その転倒は無論、かなりの大音量を伴って壁と空間を揺るがしていた。不動のままの黒衣の男が頸を俄かに上げて反応す
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