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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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うな方角へと邪推しようとも、ユミルは断る術を知らない。貴族の当主直々に、厄介事に巻き込まれてくれと頼まれたのだ。立場の弱い唯の一臣民である彼が、如何してそれを断れようか。

「・・・分かりました。私とパウリナが、命に代えてでも彼をお守り致しましょう。彼が主神の下に参るのは、寝台に横たわり、己の子孫に囲まれるその時でありましょう」
「・・・済まない、宜しく頼むっ」
「お願い致します。あの子の為にも、どうかあの御方を守って下さい」

 必死に頭を下げる二人を見て、ユミルは益々困惑の念を抱いてしまう。貴族の頭はこれほどまでに軽いものなのか、彼らだけが特別なのか、判断のしようが無い。だが一つ理解できる事がある。己の言葉によって、己の足に貴族の期待の鎖が繋がれてしまったのだ。

(・・・とんだ重責になってしまったな。冒険家、いきなり休業か)

 己とは正反対に、旅路に待ち構える浪漫に胸膨らませる相方が簡単に想像出来てしまい、ユミルはどうしようもない思いで視線を逸らした。静謐が痛いまでに頸を痒くさせてしまうのを感じるも、耐えて、耐え抜いていく。高貴な者達の礼を受けるのは、実にむず痒い思いがしてならなかった。



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 夜が雨上がりの天気のように明ける頃。東方の光が、闇を煙らせた空をほんの僅かに照らす。閉ざされた薄手のカーテンから光が毀れるかのように、王都の街から暗闇が払われていった。石は誰よりも早くに起床の光沢を放ち、木々は遍き朝日にざわめいている。城壁を警護する老年の兵士は、一日の始まりを告げる光を、目を細めて見遣っていた。
 だがその光は、石木の街の下に広がる陰惨な一室には届かない。内縁部のコンスル=ナイトの宿舎、その床下を貫く狭苦しい階段を降りていくと、一体何処にそんな空間があったのか、広大な闘技場のような空間が広がっていた。松明の炎だけが石造りの冷たい壁を強く、天上を弱く照らす。真夜中の星の光にも似た薄暗さによって、広場に立つ二つの生物の姿が映し出された。片方は黒衣の男である。男と分かるのはそのがたいの良さと、女性には到底抱えきれぬであろう、巨大な棒切れに鉄の支柱を差し込んだだけの巨大な鎌を携えていたからだ。普通の男とて、それを持てるかは酷く怪しいものであるが。項垂れた黒衣からは表情が窺えず、数十メートル先に佇むもう片方の生物の事など気にする素振りすら見せない。
 彼が対面しているその生物とは、実に奇怪な風貌をしたものであった。鳥のように細い頸によって、足を幾本も生やした鎧の如き厚い胴体を支え、スライムのように爛れて瞳を失くした頭部を繋ぎとめている。体全体が木の皿のような鈍い茶色をしており、所々、漆のような薄黒いまだら模様が光っていた。2メートル近くの胴体を支える足は人間の手足を模
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