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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の2:誓約 ※グロ注意
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 気の長そうな西日が王都に注ぎ、白光は徐々に茜色の兆しを帯びているようにも見えた。光は街の全体に行き渡り、当然の事ながら、内縁部の傍らでひっそりと佇んでいるブランチャード男爵の屋敷にもそれが注がれていた。
 窓から注がれる陽射を受けて明るくなった鏡を見て、キーラはしきりに髪型の乱れを直している。既に何度も指や櫛で梳かされてなだらかな美しさを誇っているのだが、それでも不十分のように思えて、水色の長髪に何度も指を通らせて様々な角度からそれを鏡に映している。表情は明るみを抱き、浮き足立ったように落ち着きが欠けていた。

「お母様っ、髪型大丈夫かな?乱れていないよね?」
「落ち着きなさい、キーラ。普段通りでいればいいのよ」

 何度も繰り返すやり取りに傍に居た彼女の母は穏やかな微笑を浮かべていた。太陽と鏡の二つの光を受けて自らの美を整える娘の姿は、親心の贔屓を抜いて考えても、傾城の美に達するかといわんばかりに美麗であり、純真な姿であった。塞ぎ込みがちで悲観的になっていた昔の姿からは想像もつかぬほど、母の娘は純朴に胸の気持ちを華やがせていた。
 その契機となり、今やその高鳴りの対象となった青年は彼女らが居る二階の真下、即ちリビングにて当主ミラーと向き合って座っていた。机を挟んで一対一で座り込む当主は、上機嫌そうに仄かな酒気を漂わせている。

「・・・ケイタク殿。我が館を訪ねたからには理由があるとお見受けするが、如何に?」
「正にその通りで御座います、ブランチャード男爵。此の度皇帝陛下から私に下賜された職務につきまして、お願いがありまして此方に訪問させていただきました」
「確か、北嶺調停官補佐役だったな?中々の重職ではないか、思う存分やると良い。若き失敗は何れ成功の大花となり、君の人生をより華々しく彩ってくれるからな」
「は、はぁ・・・努力致します」
 
 初めて相対するキーラの父君のテンションに、慧卓は戸惑いを浮かべながら返事をした。鼻をつんつんと突き回る麦酒の香りが、まるで蚊が飛び交うかのように平常心を乱していく。

「それで、その、お願いなのですけど・・・」
「ふむ。君は娘と仲良くやってくれているのだ、遠慮せずに言い給え」

 どっかりと腕を組んで深く首肯したミラーは、威厳を生ませるように背凭れに体重を乗せる。動作だけ見れば確かに威厳はありそうだが、実際は酒飲みが酔いに任して浮かれているようにしか見えない。
 しかし如何にも緊張気味の慧卓はそれを指摘する暇も無いようであった。何度か胸中で深呼吸をし、口の中で話すべき言葉を確かめた。そして、酒気と乱心の下に一気に言う。

「娘さんを俺に下さいっ!!!!!」
「きょえええええぁぁぁあああぁああっ!!!!」

 裂帛の奇声を挙げながらミラーは椅子を振り上げると、机に足を乗
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