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王道を走れば:幻想にて
第四章、序の1:勧誘
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族と人間族との不和を取り持ったり、或いはエルフ民族内での問題に王国としての立場を伝える、調停官をサポートする仕事です。慣例として調停官と同時に任命され、同時期に出立する予定なんです。数日後には、北嶺に向かいます」
「良かったじゃないか。重役なんだろ?」
「まぁ、そうなんですが・・・この調停官補佐役ってのがかなり癖がある職でして。」

 慧卓は其処で一息吐いて水差からグラスへ冷水を注いでいき、それをユミルに渡しながら、世間話をするかのように軽い口調で言う。

「一般的には、北嶺調停官はエルフ民族との交渉等を主任務とする役職ですけど・・・補佐官は文字通り、その補佐に専念する職でしてね。言い換えれば調停官への進言をしたり、情報の整理をしたり、身の回りを整えたり、不測の事態に備えての準備とかしなくちゃいけないんです。ありとあらゆる方向からね。
 でも知っての通り、俺は異界の人間だ。エルフという民族が何を考えているのか、北嶺でどんな事態が起き得るのか何一つ予想出来ない。アリッサさんが仕事に専念するためにも、彼女に頼り切りになるわけにも行かない。だから彼女を助けるためにも、俺の補佐、詰まり補佐官の補佐が欲しいのです」
「・・・それで俺達か。なら俺の素性がどんなのかも分かっているんだな?どうやって?」
「パウリナさんと一緒に酒を同伴する機会がありまして」
「ったく、何でもかんでも話すな、こいつは」

 水を飲みながら彼女の銀糸の束を掻き分けてやると、パウリナはくすぐったげに寝息を漏らした。慧卓は続ける。
 
「パウリナさんのお話では、貴方は北方の森林地帯で狩人をしているとお聞きしました」
「していた、だ。今はもう転職している」
「冒険家ですか?」
「な、なぜ分かる?」
「あれ、当たってました?」
「・・・お前も良い性格だよ」
「どうも」

 慧卓はにやりとした笑みのまま水差から冷水をグラスに注ぎ、それを景気良く仰いだ。潤いを帯びて通りが良くなった喉を鳴らす。慧卓は先程との軽さとは対照的なまでの真面目な表情でユミルに言う。

「と、いう訳で俺は推測してわけです。北方に幾数年暮らしていた方であるならば、もしかしたら向こうの風習や気候に詳しいのではないかと。これは向こうで仕事をする際に非常に役に立つ。それに見た感じ屈強そうですから、身辺警護も頼めそうですからね」
「・・・それだけか?俺には如何にも妙に見える。見ず知らずの他人に、それもたった一夜邂逅しただけのこの俺を頼るだなんて、まともな判断とはいえない。・・・お前、この仕事に危険を感じていないか?もっと言うと、命令を下した王国中枢に疑念を抱いていないか?」
「・・・・・・本音を言いましょうか。この長期任務は如何にも胡散臭い。この補佐役という重職、新参者の俺にとっては役者不足、
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