暁 〜小説投稿サイト〜
王道を走れば:幻想にて
第四章、序の1:勧誘
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
か申し訳無さげに且つ怒りの入った瞳で見詰め、店主は迷惑顔で睨み付けていた。酒場の酒気がどんどんと増すにつれて、喧騒の波もまた勢いを増していった。兵士の男は呆れるように背中を向けて、酒場から出て行き扉をどんと閉めた。





「酒臭い」
「も、申し訳無い・・・連れが予想以上の、その・・・」
「酒乱で?」
「・・・酒乱で」
「・・・パウリナさんは其処のベッドで」
「すまん、酒の臭いが移るぞ」
「ははは・・・慣れっこですよ」

 実務のために整然とした一室にて、慧卓は呆れるように眉を悩ませて首肯を繰り返した。彼の視線に気まずげにしながらもユミルは部屋をこつこつと歩き、背中に抱えたパウリナを寝台に下ろす。背中がびりびりとするのを感じつつもこうするより他が無いのだ。解放感にくつろいでいる彼女の寝顔が実に腹立たしいものであった。
 慧卓は此処まで彼らを案内してくれた友人に笑みを見せた。

「案内ありがとな、パック」
「礼には及ばないよ。その代わりだな」
「あいよ、今度酒奢ってやる」
「そうこなくっちゃ」

 そう言ってパックは扉を閉めた。慧卓は換気代わりに窓を僅かに開き、椅子を寝台の横に置く。

「まぁ、掛けて下さい。それから話をします・・・どうぞ」

 自らは執務もするであろう机の上にどっかりを腰を置いた。再度手で催促されてからユミルは椅子に座る。庇の上では可憐な高調子の囀りが響いている。

「さて、何処からお話しましょうか・・・まぁ取り敢えずは近況からですね。最近は如何です?お金に困ったりしてませんか?」
「報奨金のお陰で暫くは食うものに困らないな。節約を重ねれば、後二月は持ちそうだ」
「俺達の命を救ってくれたのに、報奨金がたったの200モルガンってのは無いですよね?パウリナさんはそれに加えて火事の際に人命救助をしてくれたから、700モルガンらしいですけど」
「・・・実を言うと、あれから酒を浴びるように飲んでいるよ。一日に大体50モルガンが消えていっている」
「そのペースでいくと・・・ってかもう金無いんじゃ・・・」
「実は彼女から金を借りて酒を飲んでいる」
「・・・なんか、凄い駄目男っぷりですね。でも幸運をお持ちだ。なんせ俺から今から話す話題も、ある種金が絡みますから」

 窓際から吹き付ける緩い風は夏の暑さを伴いながら髪を撫でる。パウリナの頬に宿っていた酔いの熱もそれで冷めてくれるよう祈りながら、ユミルは話を聞いていく。

「騎士になって数日経つんですが、遂に初任務が回ってきたんですよ。かなり長期の奴が」
「どんなのだ?」
「エルフ自治領に行くんです。北のクウィス男爵の領土を経由してね。北嶺調停官補佐役に就任したんです」
「ちょうてい・・・なんだ?」
「調停官補佐役です。エルフ民
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ